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Gear〜鍵を成す者〜
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Gear〜鍵を成す者〜 10

シオンは黙ったままだった。
二人が橋の上を歩き終えようとした時、ようやく彼女の口が開いた。
「彼は“夢”で終わる男じゃありません、世界を統一する、力と知識を持っている……でも、徳を持っていません」シオンは何か淋しそうに空を見上げた。
ややあってベルーナが言った。
「……私たちに何かできる事は」
「ありません」シオンは首をふった。
続けてシオンがいった。
「残念ながら私たちでは彼を止められません……それに私たちの目的は“あれ”です、歯がゆいとは思いますが、マーリンの指示に従いましょう」
彼女の拳が少し震えた。


「“聖剣”、ですか?」
「そう、聖剣……」
木の壁に囲まれた部屋。エクセリオンを出る前、マーリンの部屋にシオンの姿があった。
「聞いた事ないか?この大陸は一つの国であったという事を、そしてその国に伝わっていた剣の事を」
マーリンの言葉にシオンは首を振った。
「大昔、この大陸を一つの国にした王がいた。彼は剣、つまり聖剣をかざす事でバラバラの国をまとめあげた、聖剣にどんな力があるかは分からぬ、しかし“持つべき者”がそれを持つと、その力でこの大陸を一つにできてしまうのは確かだ、そしてその剣は今、あまり好ましくない者の手にある」
マーリンは目を静かに閉じた。
「分かりました、それを私が守れば良いのですね?」両手を組むシオン。
「それの入手、錬製、管理ができるのは君しかおらんのだ……私はもうすぐこの国から追放されるだろう、そして特務隊の生き残りは命が狙われる……最後の命令だ…聖剣を信のおける者に託せ、そして生きろ」
そう言うと同時に、マーリンの右の目が少し開いた。
深い息をつくとシオンが言った。
「……それにしても、ゴンドラとの戦いから最初に帰ってきたのが、私だったとは驚きましたよ」
「彼らが帰ってくるのを待てるのは明日まで、シオンが最初で最後かもしれんな」
「……」
「……うむ、そなたに知らせがある、よい知らせと悪い知らせ、どちらを聞く?」
「両方」
マーリンは頷いた。
「うむ、よい知らせはそなたの弟子が裏門で待っている事……悪い知らせはこれから弟子と共に行く国に、“カッツ”がいる」

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