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Gear〜鍵を成す者〜
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Gear〜鍵を成す者〜 32

男は笑ったまま手を差し出した。
「リオ、黙って聞け、私が奴を押さえ込む、その間に奴の向こう側にある階段を上ってゆけ…、人質の名はアテナだ」
リオが小さく頷くと、魔獣は烈火のごとく男に飛びかかった。魔獣は大きな口で男の腕にくらいつくと、それを勢いよく引っぱった。その隙をついてリオが素早く階段を駆け上がる。
「逃がさないですよ」
男は噛み付いた魔獣を引きずったまま、ゆっくりリオの後を追いかけ始めた。
壁に囲まれた狭い階段は一直線で、古く、踏みしめるたびにその角が崩れていった。リオは度々後ろを振り向きながら走った。後ろには魔獣を引きずる男がゆっくり歩いている。
前を向き全力で階段を駆け上がるリオ、その背中が突然温かく感じた。
「逃げろ!!」
魔獣の声が背中から聞こえた。魔獣が何かしたのはわかったが、リオは振り向くことなく出口を目指した。
「この機会、無駄にはできない」
リオが階段を上りきり出口にでた瞬間、走っていた階段の通路から炎の柱が勢いよく天に上った。
「すまない魔獣よ…、必ず約束は守る、見守っていてくれ」
リオが出たのは青空の下の芝生だった。さっきの男の仕業か兵士の死体がそこらじゅうに転がっていた。
「リオさん…」
「あの男、生きていたのか…」
リオは後ろを振り向くと、階段の出口に手を当てた。石でできた通路はドロドロになって閉じていく。
「リオさ…」
「これで時間は稼げたはず…、それにしてもまいったなぁ、いったいここはどこなんだろう」
リオはしばらく辺りを見渡したが、街も城も近くにはないようだった。
ガサガサ、草むらが不自然に揺れた。リオは気付かないふりをして通り過ぎる。
「待て、無視するな!!」
「悪いが、暇じゃないんだ、後にしてくれ」
リオが冷たい視線をおくると、草むらから迷彩服を着たソルが姿を現した。
「困ってんだろ?実は俺も困ってんだ、取引しないか?」
「断わる、道ぐらい一人で見つけられる」
溜め息をつくとソルは得意気に話し始めた。
「…俺は特別な道を知ってんだ、シオンって人から聞いたね」
「シオン!?」
「代わりに錬金術を教えてくれればいいだけだ、悪くない取引だろ?な?」

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