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クロスロード
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クロスロード 20

「ちっ、喰わせ者だな。アイツは」
辛辣なセリフを吐いたシムの顔は、しかしそこまで嫌味な色はしていなかった。
むしろスパークの人柄を信頼しきっている様な声色であった。
「いいのか?今は前の戦いで減った人手を取り戻さなければならないんだろ?」
「別にいいさ、リロイ。それは隊長の仕事だろ。 それより悪かったな?実験台みたいなマネをして」
そう言ってリロイの頭についた林檎の破片を払うシム。 髪の毛は林檎の果汁や何やらでベタベタだ。

「本当だよ。まったく、嫌な役周りだ」
リロイも自分で髪の毛を払う。しかしベッタリとついた林檎の破片は中々取れようとしない。
「ははっ、悪かったよ。またなんかで埋め合わせるからさ」
シムは弓を弾くマネをして笑うと、兵舎への道を辿り始めた。リロイも笑いながらシムを追う。
サザンクロス隊、再始動の日は近づいていた。


「隊長、何故です!!」
テントの中でナシアスが叫んだ。興奮した彼の首根っこをバルロが掴んで落ち着かせようとしている。
「ナシアス、頭を冷やせ、今度は本当の“戦場”なんだぞ?」
「バルロは黙ってろ!!隊長、連合軍の補給を護衛するだけでしょ?何故引き受けないんです」
サルファは閉じていた目を開くと、冷静にナシアスの目を見つめる。
「連合軍の敵である“ジオ”がナシアスにとって仇である事は承知している、しかし、今度の戦いは“戦争”だ、多くの仲間が死ぬのを覚悟する必要がある…、最悪の場合全滅もありえる…」
「仲間は俺が必ず守ります!!だから──」
「バルロ、頼む」
サルファがバルロを見ると、彼は黙って頷き、ナシアスをテントの外へ連れていった。
「離せよ、離せバルロ!!」
バルロはテントの外に出るとナシアスを地面に投げつけた。
「ナシアス!!分かっているだろ…、“ジオ”はお前にとってだけの仇じゃない、俺や隊長も家族を皆殺しにされてるんだ!!」
「………」
「隊の、仲間の命がかかっている以上、軽はずみな事はできない!!分ったら自分のテントに戻れ…」
冷たい背中を見せ去って行くバルロ、ナシアスは地面を力一杯叩くと、そのまま寝転がった。見上げる夜空は、沢山の星がちりばめられて明るく見えた。

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