三種のカード 2
和哉「まずバトルエリアに朱眼の戦士を召喚するよ。そしてサポ-トエリアにリバ-スカ-ドを二枚セットしてタ-ンエンド」
(問題は二枚の伏せたカ-ドだ。警戒するのは簡単だが…)
焦りながらも冷静に宏樹は次の手を考える。
宏樹「俺のタ-ン、ドロ-…バトルエリアに砂漠の魔術師を召喚、サポ-トエリアにリバ-スカ-ド二枚セットして砂漠の魔術師で朱眼の戦士に攻撃する」
魔術師が杖を振り上げ、光弾が戦士を襲う。しかし光弾は戦士に命中しなかった。
和哉「…リバ-スカ-ドオ-プン!地脈の隔壁!」
戦士の前に壁がせりあがり、光弾は壁にはじかれた
宏樹「かかったな、カウンタ-スペルカ-ド『竜の囁き』発動。デッキからランク5までの下僕(しもべ)を召喚する!」
「バトルカード」のモンスターは5段階のランクに分けられている。
強いモンスター、或いは効果が強いモンスターほどランクは高くなるのだ。
竜の囁きが宏樹のデッキから聞こえ……それが大きくなっていった。
「“欲邪竜ダースアリフィア”、召喚!」
「…………」
――混沌とした欲望を竜の形にしたかのような、おぞましい物がその場に現れた。
「よし! どうだ、このカードこそ俺が最強と言われる理由だぜ! こいつはなぁ俺のライフを半分にすることによって、相手ライフを1000削れるんだ! 3回使えばお前の負け! くはは、ザコザコザコザコォ!」
宏樹は笑っていた。醜く、自らが欲邪竜であるかのように醜く笑っていた。
暗西宏樹。家は経済界に顔を利かせる暗西グループの系列。
この辺りでレアカードを持っている子供がいれば、容赦なく奪いにいく最悪極まりない男。
「僕のリバースはまだ一枚残っている。カウンタースペル、“オアシスの誘惑”発動」
次にバトルカードになるのは、こいつで……いいだろう。
「相手のモンスターの効果を、このターン内自分が使うことが出来る」
「な……に!?」
「僕が選択するのは、君の最強のレアカードだ。自分の欲望が造り出した竜に、自分の身を焼かれればいいさ」
宏樹のライフが減る。2000、1000、0。
戦いが、終わった。
「う……あ、あ」
「どうだい、自分の最強カードが殺られた感想は」
どうやら戦っている間に、宏樹にレアカードを奪われようとしていた女の子は何処かへ逃げたようだ。
「バトルカード」専門店“ブラウザクラッシャー”の前には今、宏樹と和哉の2人しかいない。
「て……めぇ! オアシスの誘惑だぁ!? そんなカード知らない、俺は知らないぞ」
「黙れよ」
うろたえる宏樹に、和哉がドスの聞いた声を放つ。
今までの明るいテンションとは正反対のそれに、宏樹は何も言い返せなくなる。
「バトルカード……20年前に発売が開始、立体映像の精巧さや種類の豊富さ等から世間に普及し、今や空前のカードブームの先端になっている……お前もバトルカードを使う者なら、知っているだろう?」