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ランドランド〜キラの旅立ち〜
その他リレー小説 - ファンタジー

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ランドランド〜キラの旅立ち〜 9

「クラレイ…です」
「クラレイ?」
 卿は首をかしげた。
「どこかで聞いたような名だ。姓はなんという?」
「…クラレイ・レジャン」
 ためらいながら、キラはクラレイの名を告げた。卿は全てを悟ったのだろう、わずかに目を細めた。
「ファンタン・レジャンの子息か」
「ご存じですか」
「父親のことはな。だが、まさかお前の友人が彼の子息とは」
 さぐるような父の視線に、キラは少々居心地の悪い思いをしながら続けた。
「彼は、アリエルに面会したいそうです。非公式に」
「なぜまたそんなことを」
「個人的に訊きたいことがあると言いました。二人ともうちに招待しようかとも思いましたが…王の御前で対面させるなら、おかしなことにはならないでしょうし、その方がいいかと」
「おかしなこと? アリエルが少年に斬りつけるとでも思うのか?」
 父の言葉に、キラは逆にぎくりと緊張を覚えた。
 そんなことを危惧していたのではない。彼は単に、ジークランド家に二人を招いてあからさまに対面をセッティングするよりは、偶然を装った方が対外的に良いのではないかと思っただけだ。
 卿の反応は明らかに過剰だった。秘された事実の大きさを、それはいやでも予感させた。
「…父さんは、事情をご存じなんですか。じゃあ本当に、あいつの父上がアリエルを」
「それ以上は、本人に語らせるのがよかろう」
 セディン卿は手をあげて彼の言葉を制した。
 父には語る気がないのだと悟って、キラは大人しく追及を止めた。
「…あいつの登城に、問題はありますか? 父親のことで何か…」
「ありそうに見えるが、そうでもない。非公式だからな。王のお許しさえあれば何でもありだ。その子自身には、何も問題はないんだろう?」
「落ちこぼれてますけど」
「それならお前と同じだ。何も問題ない」
「父さん…少しは言葉を選べよ」
 実の父に落ちこぼれを思い切り肯定され、キラは少しだけ傷ついた。卿はあきれた顔になった。
「自分で言ったんだろうに」
「そりゃそうですが」
 我ながら子供みたいだと思いつつ、口をとがらせてそっぽを向く。
 息子のそんな反応に、卿は苦笑した。
「そうか。息子が真相を知りたがっているのか。…そんな歳になったか」
 しみじみと、彼は言った。遠く、過去を見る目をしている。
 それから卿は、キラを見て笑った。
「お前も大きくなったな。…我々も、歳をとるはずだ」
 キラは不意に、奇妙な不安にかられた。父がこんなこと、自らの老いを認めるのは初めてのことだった。
 実際にはまださほどの歳ではないのに、このとき彼は倍も老け込んで見えた。
「父さん? 一体何を…オレはただ、クラレイが知りたがっているから、手伝ってやろうと思っただけです。あいつが望んだのでもない、オレの独断です。何か弊害があるなら取り消します。それくらい何でも、」
「いいや、取り消すことはない」

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