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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 8

「そう言ってやるな。お前に会えなかったからと、がっかりして泣いていたぞ、アリエルのやつ」
「泣くか!」
 父の言葉に、キラは身振りつきでつっこんだ。そうしながら、屈強の猛将が泣き崩れる様を想像してしまって、彼はうっと呻いた。
 彼の反応などどこ吹く風とばかり、卿は、ハハ、と笑った。
「だがどうしてまたサボったりした? もったいないだろう、あいつの講義は私のより評判がいいんだぞ」
「父さんの講義を面白がれるのは、特待クラスの最上級生くらいです。それ以外が相手のときはもっとレベルを落としてください」
 スキャンダラスな政治改革論をぶちあげて、アカデミーの学生達の頭に一斉に「?」の嵐を巻き起こした父の特別講演を思い出してキラはそうたしなめた。
 父は少々不満そうに、前向きに善処すると答えた。どこまで本気かわかったものではない。例の講演も、アカデミー側との事前の打ち合わせからどんどん脱線していった結果らしい。アカデミーの教官は全員、学生への口止めやその身分の高い親たちへの根回しのために大混乱に陥り、おかげでキラにもその後しばらくは風当たりがきつかった。
 完全にとばっちりだ。いろんな意味で迷惑な父なのだ。
「ああ、ところで…」
 息子の恨みがましい視線にさらされ、卿は話題を切り替えた。
「週末は空けておけよ、キラ」
「何です、父さん?」
「王のお召しだ」
 キラは盛大に顔をしかめた。
「嫌な顔をしない」
 たしなめる父に、彼は目を伏せた。
「…すみません。でも、遊びに召されるのはそろそろ遠慮願いたいというか…」
「陛下におかれては、年わかい御身で周囲に気のおけない相手もおらん。お寂しいこともあるだろう。その陛下に気に入られているんだ、名誉なことだと思え」
「はあ」
 了解ともため息ともつかないキラの返事に、卿は苦笑した。
「そうそう、アリエルもお前に会いたがっていたぞ。何か話があるらしい。アカデミーで会えると思っていたのに、お前サボるから」
「話?」
「内容は知らん。週末お前が登城する旨を告げたら、そのときに話すと言っていた。うちに招けばよいのだろうが、あいつもなかなか忙しい」
「…じゃあ、王宮でアリエルと対面できるってわけか」
 父の告げた言葉にキラは、ふと思いついてこう言った。
「アカデミーの友人を伴ってもよろしいでしょうか」
「友人?」
 卿は片眉を上げた。
「…いたのか?」
「あんたオレをなんだと思ってるんだ」
 あまりと言えばあまりな父の言葉に、キラはげんなりと肩を落とした。が、言い返してはみたものの、それほど自慢できる身分ではない。いると言っても数える程度だ。
「かまわんと思うぞ。明日にでも陛下に許可をいただいてやろう。その友人、名は?」
 卿はあっさりと頷いた。

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