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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 41

「俺も、クラレイも――それでずいぶんからかわれて。でもそれが最初でもあったんですよ。同病相憐れむというか、その件については二人とも被害者っていってよかったので……」
「それほど、あっちこっちでその話がされていたわけね」
「そうなんです。うーん、たぶん、頭から信じたやつっていないと思いますけど、でも……」
 どう言おうか、言いたいことはあるのにうまい言葉が見つからず、キラは口ごもった。
「でも、実在の人物が登場して、よく知られていることだけでも事実が交えられていたら」
 クラレイがひきとる。
 さらに、アイアダルが続けた。
「きっと、あまりに極端な――その、言葉遣いのこととか――を除いては、真実もふくまれているように思うかもしれません」
 巧妙な嘘は、真実の中に少しだけ紛れているもの――とは、よくいわれるが、この場合、真実と、真実らしいことと、そこから推測しうる不確定の事柄と、明確な嘘が、最後のものをのぞいては混在している。しかも、唯一はっきりわかる嘘のせいで、ほかのことはそれとの比較でなんとなく、真実らしく思われてしまうのだ。
 それが真実という証拠が、まったくなかったとしても。
「だから、アカデミーでわたしが言われたことも、そこから広まって、なんとなく事実のように思われているのかもしれませんが。たしか、その話でも、ジークランド卿がかけつけられたとき、すでにガラタクル卿は脚を負傷されていた……ということになっていましたから」
 クラレイがいうのはもちろん、ファンタン・レジャンが敵と内通したせいで、ガラタクル卿が隻脚の身になった、という話のことだ。
「でも、そんなふざけた読み物を読まないような連中……あ、失礼を」
 連中、などというのは明らかな失言だった。
 慌ててクラレイは口をつぐんでしまったが、アイアダルにはすでに続きが予測できていたらしい、ついでにいうなら咎めだてもせず、
「ええ、きっと、それだけが『裏切り』の話をひろめたのではないでしょう」
「……はい」
 さっきのヘマで、少々落ち込んだクラレイだが、すぐ気を取り直した。是非とも言わなくてはならないことがあったのだ。
「その……読み物のほかにも、裏通りでは色々売っていたんです」
「色々?」
「はい。娯楽読み物だけでなくて、そこには、普通には世に出せないようなものも出回っていますから」
「何を、見つけたの?」
「内容としては、さっきのものと似ているんです――父が裏切ったのだと書いてあるのですが……ただ、ずっとまともで、詳しくて」
 クラレイは、ちょっと身を震わせた。
「裏切りと判断するしかない根拠が、しっかり書いてあるんです。さきほど、まさに王姉殿下のおっしゃったこと――計画の前倒しや、ガラタクル卿が負傷された位置――まったく同じことについて触れ、やはり奇妙と評し、そして、父……ファンタン・レジャンの裏切りを鍵として、それを解きあかしているんです」
 色を失った唇を噛んだ。

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