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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 40

「それで?」
「ガラタクル卿がただ一人、孤立無援となったとき、父が――というか、父と同じ名で描写されている人物が、命を助けるかわり、卿にも寝返りを勧めるのですが」
「ぐっ……」
 くぐもった、キラの笑い声。
「なにを、そんなに笑っているの?」
「な、内容は、たしかにクラレイの話したとおりなんですけど……」
 キラは、ちらりとクラレイを見た。クラレイが頷いた。
「かまわないから、言ってくれ――どうも、俺の口からは無理らしい」
「あー、なら言うけど、俺は、これを信じちゃないからな」
 前置きして、キラはいった。
「ええと、その、殿下――そんなわけなんですが」
 ……ちょっと前のクラレイを笑えない、歯切れの悪さだ。
「そのですね……あくまで、その読み物の中では、って話ですよ。こいつの父親が、なんというか、むしろそりゃ母親的ななにかだろうというような喋り方を……」
 平たくいえば、なぜかオネエ言葉を使っていたのだが、たぶん単語をそのまま伝えても、王姉殿下はご存知あるまい。
「で、ジークランド卿はなぜか語尾が全部『だぜ』なわけで」
 ぼそりと、クラレイがつけくわえた。
「そのジークランド卿が、とり囲まれて寝返りを迫られているガラタクル卿のもとに――同じ言葉を使ってしまいますが、なぜか、単騎馳せつけて」
「そこまでどうやってたどり着いたかもさっぱり説明のないまま、ですよ」
「で、敵をさえぎるわけなんですが――『そこまでだぜ!』って、一喝するんです」
 二人、交互に説明した。
「だ、『だぜ』?」
 目を白黒させて、アイアダル。直後、頬がひくっ、とひきつったのは笑いの発作をおさえようと努めたのだが――敵はあまりに強力すぎた。
 なにせ、彼女にしろキラにしろ、ジークランド卿の実物を知っている。その口から「〜だぜ」なんて台詞が出てくるのを、知らない者よりずっと鮮明に想像してしまうわけだ。
 ……かなり、きびしい図だ。きびしすぎて、逆に笑いがこみあげてくるほどに。
「『覚悟しろだぜ』とか、むちゃくちゃなのもありますよ」
 ジークランド卿を直接は知らないクラレイのほうは、可笑しがることは可笑しがっているが、それでもずっとはやく笑いがおさまっている。
「どうも、型破りで血気さかん、というイメージらしいんですが」
「だからって……なぜ、『だぜ』なのかしら……」
「しかも、剣をふりまわすと地面に亀裂が入って、敵はほとんどその中に飲み込まれてしまうんです」
「――なんだか、それはもう、伝説の中のお話ね」
「まったくです――それで、そのとき生きて逃走したのはただ一人」
「ファンタン・レジャンということになっている人物ね」
 それしかない展開だが、一応アイアダルは確認した。
「はい」
「この読み物、あまりにバカバカしいんでアカデミー生の間で妙にはやったときがあって」
 真顔にもどって、キラがいう。

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