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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 38

 十八歳で高等課程を修了したのちは、得意分野の専門課程や陸・海の士官学校へと進学するのが一般的である。
 アイアダルがいたってまじめな調子で言ったので、キラたちに本気か冗談かを判断する材料はなかった。
「殿下、お願いですからそれだけはご勘弁を、」
 キラの情けない声に、彼女は、クス、といたずらっぽく笑った。彼はそれでようやく、彼女が自分をからかったのだと確信が持てた。
 アイアダルは、こほんと小さく咳払いした。
「…確か、風説によれば、あなたのお父様がこの戦のきっかけを作ったということになっていたと思うのですけれど」
「は…わたしも、そう聞いています」
「詳しくは、どのように言われているの?」
「え?」
 クラレイは戸惑ったように視線を泳がせた。
「詳しくといわれても、おわかりとは存じますが、わたしに面と向かって話すやつはいないので、」
「何かお前、いちいち歯切れ悪いぞ」
 言い訳がましいクラレイに、キラはカップを見つめながら言った。
「茶化さないのよ、キラ」 
 アイアダルは大人らしい態度でキラを止めた。
「そう――たしかに、面とむかってファンタン・レジャンの所業をあなたに詳しく言う人はいないでしょう」
 こんどは、彼女はクラレイにいった。
「けっこう、『裏切り者の伜』だの『売国奴の餓鬼』だのっていうのは、正面から言われましたけど――俗悪な言葉を使ってしまってすみませんが」
 とはいえ、この二つは彼の浴びた罵言のなかではまだお上品なほうなのだ。ただ、それ以外のものまでここで披露すると、話題がずれる。なにしろクラレイ自身がけっこうな悪ガキだったため、親子二代ひっくるめて罵られたことも少なくない。
 だから、どうしてそんな罵られかたをしたのかということになると説明に窮するし……そのまえに、あまり下品な罵倒語はかえって王姉殿下には意味不明で、なにがどう罵倒になっているのか、これまた説明に困るはめになる。
「でも、殿下のおっしゃりたいのは、そういうことではないのでしょうね」
 と、クラレイはしれっとして続けた。
「わたしに直接、そこで何が起こったのかを教えてくれた……たとえ、親切心からでなかったとしても、告げてくれた……そんな人はいなかっただろうとおっしゃるのでしょう? 事実、そうですし」
「ええ。戦線の報告にしても、わたくしがさっき要約して話したことですべてですから、もしその気になっても説明するのが難しい、ということもあるでしょうけど――でも、事実は記録にのみ残されるわけではないわ。人の口づてに伝わっていくこともある――だから、聞いておきたいのです」
「………」
 何も口にはしなかったが、クラレイの顔はさっと青ざめた。
(つまり、わたしが周囲の連中にいわれてきた「裏切り者」で「売国奴」っていうのが、父の事実だと――殿下は、そうのたまわれるのですか!)

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