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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 34

 東方の国々がそろってホムラの求めに応じたがらぬのは、すでにその国々が意をひとつにしているあかしだ。
 ……もし、これが、「多数の国が同時にホムラに対して戦をしかけてきた」というだけの話であれば、ホムラは大国で人材も豊富だ、持久戦に持ち込むのはたやすく、そうすれば必ず相手国が先に疲弊して降伏し、戦闘による被害は最小限におさえられる。まあ、これは理想で、実際には戦闘もせざるをえないだろうが……それでも、「負ける」などという虞は一切なくかまえていられる。
 が、「複数の国が連合してホムラを攻めてくる」なら、話はまったく違ってくる。
 単純に、挟み撃ちや偽装といった敵方の戦略のバリエーションが増えるという問題もあるが、それより、ホムラと直接国境を接していない国々が兵を出し、武器や食糧を供給し――ということになってきては、持久戦に持ち込んだところで必ずしもホムラが有利とはいえなくなってくるのだ。
 そこで、彼はある決断をした。
 このシノム‐パドーラ戦線だけでも、早急に決着をつける。そこからタルバタナに進撃し、降伏せざるをえない状況にまで追い詰める。
 もちろん、容易にゆくはずはないが、それと各戦線――とくにタルバタナに近い戦線を連動させて他国がその応援に駆け付けられぬようにすれば、一時的にではあっても「ホムラ対タルバタナ」、ただそれだけの戦いになるはずだ。
 そして、タルバタナだけでもまず降伏させてしまえば、東方諸国の「連合」には穴が空いたことになる。……穴さえ空けば、それは「連合」との戦いではなくなるのだ。タルバタナに引きずられて降伏する国も出てこようし、タルバタナ及びそれらの国の兵を陣頭にたたせれば、相手の戦意減少にもつながる……

「六月の下旬……ああ、資料も持ってきていたらよかったわね。でも最初からこの話をしに来たようではガラタクル卿もご不快に思われましょうし――話ができなければできなかったで、次の機会を待つだけと思っていたものですから」
 アイアダルがいった。
「ああ、でも、そう……思い出したわ。六月の二十七日だったはず」
「その日に、何が?」
 期せずして、キラとクラレイの声が重なった。
「ガラタクル卿の策が実行された日、そして同時に、彼が片脚を失った日です」

 それまでのひと月の膠着の間に、シノム‐パドーラ戦線のホムラ側本陣は、土塁と石塁に守られた一個の砦になっていた。シノムとパドーラからほぼ等しい距離にあり、両城塞からホムラの内地を守るこの砦を、ガラタクル卿は山間の地形を利用しつつ、驚くべき短期間で建造させていた。
 砦の両側には山の稜線にそってやはり石塁が連なり、昼夜を問わず騎士・兵士が哨戒に立っているから、これまでタルバタナ軍は砦をやりすごしてホムラへ侵入することもできなかったのだ。
 その夜も、砦を中心に哨戒の篝火が山々を紅に照らしだしていた。

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