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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 33

「いま、ジークランド卿が『当時も外務卿だった』といいましたけれど、実はシノム‐パドーラ戦線に赴く際におしつけられたようで」
「?」
「それまではベリアント卿――いま民政官となっているあの人ではなくて、そのお父上が勤めておられたのですけど、どうも荒っぽいことになりそうだということで……なにせ、奇襲で陥された城塞を取り返しに行くわけですから。それですっかりお肝が縮んでしまったみたい。家柄が適当で、若くて、武闘派で有名だったジークランド卿を後釜に推挙すると、辞任の上奏文を出してしまわれたの」
 なるほど、ジークランド卿の外務卿任命は、今も昔も非常時ならではの人事というわけだ。
「……ただ、奇襲をかけてきたような相手と対等に向き合えて、家柄がふさわしいという条件での人選だったので、実際の文書の作成や法律的な手続きということになると、ベリアント卿は少々心配だったようですね。それらを任せられる補佐役として、ファンタン・レジャンをも、彼は推挙したのです」
 アイアダルは言わないが、ファンタン・レジャンが外務卿にならなかったのは、家格のせいに違いなかった。
「実際に、タルバタナ軍と睨み合いをしつつ、兵をひいて交渉に応じるよう要請するおびただしい文書がやりとりされた、その一部は残っていますが――そこにはほとんど、“セディン・ジークランド”の署名に並んで“ファンタン・レジャン”の名が記されています」
「それが、『ふさわしいとは考えられぬところ』ってわけじゃ、ないですよね」
「もちろん、違うわ。その資料は、大戦のもっと後期に関するものなの」

 ホムラ側の持ちかける交渉を、タルバタナはことごとく突っぱねた。進展のないまま、ひと月がむなしく過ぎた。
 そこで、予想外のことが起こったのである。
 東方の有力な国であるシノノメ、ほぼ同時にアズマ、さらに続いてスボシ、ソイ、アシタレなどのやや大きい国、それからいくつかの、宣戦布告をしてようやく「あったのか」と分かったような、ホムラとは縁うすい小国までもが相次いで国境に攻めよせてきたのだ。
 アイアダルとエインゼルタインの父でもあるアルフェル王は、騎士をとりまとめて軍事を司る騎士侯、騎士伯に配下を率いて迎撃にあたらせたほか、数人を臨時の将軍に任命して、戦地へ向かわせた。
 王はまた、ガラタクル卿にこれも臨時の「東方元帥」の位を賜り、東方の戦乱をおさめるための総指揮を命じた。ガラタクル卿はもとより、騎士侯、騎士伯を統率し、軍務全般をになう護国卿の地位にあったから、人選としては適当ではあったのだが、おかげで彼は俄然忙しくなった。
 しかも――東方の有象無象の国は数多くあり、ホムラの味方となるか、せめて中立を保つようその国々に送った密使は、そろってはかばかしい返答を得ることなくむなしく帰還した。
 焦らざるを得なくなる事態である。

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