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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 31

 つまり、彼女もまた、切りだしかたに迷うところがあるわけだ。
「それに、考えてみれば、ファンタン・レジャンについて、わたくしとクラレイが知っていることにすら、差異や矛盾があるかもしれない」
 そのとおりだ。アイアダルは現実の――生身のファンタン・レジャンを知らず、クラレイも父の戦場での姿をほとんど知らない。
「ねえ、まだガラタクル卿は見えませんし、ここで、お互い知っていることを教えあっこしません?」
「そ…れ、は…」
 クラレイの反応は、キラには意外なものだった。キラには、アイアダルの申し出はクラレイにとって願ってもいない好機に思えたのだ。知りたいことを訊くのに、これ以上の相手はいない。
 だが、クラレイは明らかに逡巡していた。
「気が進みませんか?」
 アイアダルの方は、ある程度予想をしていたのだろう。驚く風もなく、穏やかにそう質した。
「…殿下のお考えが、読めなくて」
「おい!」
 クラレイの不遜な言葉に、キラは慌てた。いくら気安い態度で接してくれるからといって、探るような物言いをしてよい相手ではない。
 しかしアイアダルは、すっとキラに視線を寄こした。黙っていなさい、と雄弁に語るひとみに、キラは大人しく従った。
 クラレイは続けた。
「わたしの知っていることで、殿下のご存知ないことはほとんど、全く、ないと思うんです。大戦についても、アカデミーの講義と図書館の資料以上のことは何も知りませんし」
「そうとは限りませんよ。あなたは当事者でしょう。わたくしは結局、あなたのお父上がどんな人物かも知らないのですから」
「それは、俺、わたしにもわからないんです。わたしが知っている父は、わたしの記憶ではなく、母から聞かされたものです。母は父を良く語る傾向があるので、どこまで真実か…」
 アイアダルはそこで、はっきりと苦笑した。 
「別のきき方をするべきでしたね」
 キラははっとして彼女を見た。アイアダルは静かにこう続けた。
「あなたは納得していないのでしょう。調べて、その結果、何か腑に落ちぬことがあったのではなくて? それがわたくしの考える『謎』と、関わりあるものかどうか知りたいのです」
 ひどく率直な言葉に、クラレイが小さく息を飲み込んだ。
「…それではひとつ、お訊ねしても…」
「ええ、どうぞ」
「殿下の言われる『謎』に、わたしの父が関わっていると、殿下はお考えですか」
 アイアダルは頷いた。
「ええ」
「それは、なぜ?」

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