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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 25

「いえ」
 クラレイは首をふって――そして、いまのアイアダルの言葉へのひっかかりは、とりあえず置くことにしたらしい。
「ふたつめにお尋ねしたかったのは、司書どのはそんなにあれこれの話を、いつも殿下に申し上げられるのか、ということでした」
「そういう質問ではないかと、思っていました」
 静かに王姉はいい、あまりの静かさに、キラは少なからずどきりとした。相手の質問を、相手が口に出す前からわかっていたのは、もちろん推測したからだろうが……アイアダルは微塵も、何かを考えている様子は見せていなかったのだ。
 彼女はいつもどおり、おだやかに、はかなげに、微笑をうかべて、やわらかな声色で喋っていただけだ。それなのに――
「と、いうことは」
 キラの思考、というより物思いを醒ましたのは、クラレイの声だった。いくらか、苦笑の響きがまじっている。
「殿下におかれましては、わたしが何故そのような質問を申し上げたのかも、ご推察ではないかと思うのですが」
「ええ」
 なんでもないふうで、アイアダルは肯定した。
 ふたたび、キラは思っている。この人は、すべてをあまりにも自然に「解ってしまう」のではないか、と。
「それは、もちろん――不思議でしょうね。本当なら、わたくしは政務もありますし、とうてい図書館の司書などと世間話をしている暇などはないと、思われているでしょうから」
「………」
「それがなぜか、図書館でのあなたの様子を知っているのなら、当然、わたくしがあなた――クラレイ・レジャンについて知ろうとし、まあ経緯はいろいろ考えられるけれど、とりあえず、図書館によく来ることを耳にはさんだので、司書を呼び出して詳しいことを聞きだした……というのが、まっさきに思いつく、一番ありうる想像でしょうね」
「そのとおりです。少なくとも、たまたま王姉殿下に出会った司書どのが、何も訊かれぬのに、わたしの図書館の様子について申し上げると想像するよりは自然ではないかと」
「そうね。シルドが突然そんな話を、わざわざ王宮まで来てするわけはない――ああ、わたくしが王宮を出て図書館に行く、というのはちょっとありえないので」
 脚のゆえもあるし、王族が外出するとなれば、それがただ図書館であってさえ、お付きの人員がぞろぞろついてゆくことになるからだろう。
「――けれど、わたくしは、あなたのことだけを調べたのではないの」
 この言い方は、最初の仮説――「アイアダルがクラレイについて何らかの理由で調べており、クラレイがよく図書館にいることから、司書を呼び出し、話を聞いた」というのに対して、かえって一部は認めたことになる。つまり、彼女は「クラレイに関わるなにかを調べていた」ということだ。
「きっと、最初から話したほうがよいのでしょうね。べつに、なにか秘密があるわけではありませんし」
「………」
「それに――これからガラタクル卿のお話を聞くのにも、そのほうがよさそうですから」
 もっとも、当人はまだ姿を見せないが。

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