PiPi's World 投稿小説

ランドランド〜キラの旅立ち〜
その他リレー小説 - ファンタジー

の最初へ
 20
 22
の最後へ

ランドランド〜キラの旅立ち〜 22

「ええと、この者はわたしの、アカデミーの同輩で、」
「ウルレイはね、ねえさま、キラの友だちなんだって」
 幼児のわくわくとした声が、勢いよくキラを遮った。
 エインゼルタインは、王として自ら姉に友人を紹介してやらねばならないと思ったらしい。高い椅子を飛び降りて、ぱたぱたとクラレイに駆け寄った。
「それでね、ねえさま。だから、おれの友だちなんだって」
 そうなの、と彼女は弟王に温かく微笑んでみせ、次いでクラレイを見上げた。
「座ったままでごめんなさい。一度座ってしまうと、立ち上がるのが骨なものですから」
 立ち歩くのに杖にすがらねばならない姫は、唇に笑みを浮かべたままそう言って詫びた。
 クラレイは、とんでもないと返そうとした。そのために唾を飲み込み、息を吸い込む。だがアイアダルは彼の言葉を待たずにこう続けた。
「キラのお友達なのね。よろしくね、クラレイ=v
 その名はごくさりげなく、ささやきのように放たれた。しかしキラには、一歩後ろに立つクラレイが、何かの飛礫を浴びたように激しく身をすくめたのがわかった。思わずかえりみた先で、彼は実際、あわれなほどに青い顔で、懸命に呼吸を整えようとしていた。
 聡い摂政の君が、クラレイの反応に気づかなかったはずはない。しかし彼女は一切そのそぶりを見せず、どころかいっそうやわらかく微笑んだ。
「陛下は…わたくしの弟は、あなたがお気に入りみたい。キラと一緒に、またいらしてね」
「か、かたじけなきお言葉」
 うわずった声で答えるクラレイに、アイアダルはやはりやさしい声で、
「そのように、硬くならずとも」
 いいながら、クラレイの緊張の様があまりに甚だしいのにこらえきれないのか、目はいたずらっぽくきらめいた。
「そもそもこの場は、陛下――いいえ、わたくしの弟が」
 と、彼女はそこを強調して、
「非公式に御友人方をお招きしたもの。わたくしはただ、その姉として、お喋りの輪に加えていただきたくて、つい顔をだしてしまっただけのことですから」
 くす、とかろやかに笑った。
「ですから、いちいち頭の中で礼儀作法の本の内容を思い出すことはないのですよ」
 図星をさされて、クラレイの顔は今度は紅潮した。
「……あたり、ですか?」
 アイアダルが尋ね、クラレイは口での返答を思いつかず頷き――それが妙に子供っぽい仕種になったのを自覚したか、彼はあろうことかぶっと噴き出した。
 が、それがかえって場の緊張を破るきっかけになって、アイアダルとキラも同時に笑い声をもらした。クラレイも、噴き出した一瞬こそ「しまった」という顔になったが、二人の反応を見るとあらためて笑いだしている。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジーの他のリレー小説

こちらから小説を探す