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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 21

「いい奴だな」
「誉めてんのかそれ」
 何を言われるのかと緊張してしまった自分を恥じつつ、間髪入れずに問い質す。クラレイはこう答えた。
「どっちかってーとバカにしてるが、一応誉めてる」
「どっちだよ…」
 悪びれない口調に憤慨する気力も出ず、力無くつっこむのみである。
 クラレイはぷ、と吹きだした。
「半分冗談だ。…助かった」
 笑いまじりの台詞の後半は、深いため息と共に吐き出された。
 ごくごく小さな呟き声だったが、キラには聞こえた。彼は奇妙な満足感を覚えた。…が、クラレイは次の瞬間には、最前の真面目な口調が嘘のようにけろりとした顔でこう続けた。
「あんたがいなきゃ、国王陛下と摂政の君の御前で、アワ吹いて失神してたかもしれないな、俺は」
「…お前、たぶん自分で思ってるより神経太いぞ。自覚しておけよ」
 何だか振り回された気がして、悔しまぎれに返した言葉は、クラレイを笑わせただけだった。


 侍従に案内されたどりついた白鳥の間で、王とその姉姫はすでに着席していた。
 幼い王は少し高い子供用の椅子から、隣に座る姉の耳元に口を寄せて、何事か内緒話をしているところだった。アイアダルもそちらに首を傾け、くすくすと幼児と少女の笑い声がもれる。
「ねえさま、それでね…」
 高貴な姉弟は、二人が入室したとき、一瞬だけそちらに目を向けてほほえんだ。が、王はすぐに熱心な様子で、口の周りを両手で覆って話に戻ってしまった。
 所在なく立ち尽くす二人を、アイアダルがふたたび見遣ったのは、王が一言二言何か話し終えてからのことだった。
「待たせましたね。もうよろしいのよ。二人ともこちらへおかけなさい」
 すっかりお茶の支度の整った円卓に、招かれるまま二人は怖々と近寄った。
 円卓の傍らで立ち止まった二人に向かって、アイアダルが声をかけた。
「キラ」
 彼女の声は優しい。高すぎず低すぎず、語尾はやわらかく空気に融ける。だが決して弱々しくはなく、確固とした意思の音色が凛と響いた。
 名を呼ばれることで、頭の隅にある不安定な心持ちがゆるやかに慰撫される。この感じは久々だ…キラはなじみのある不可思議な高揚に身をゆだねつつ、そう思った。
「はい、殿下」
「お連れの方に紹介してくださる?」
 自身の感覚に没頭していたキラは、彼女の言葉に慌てて姿勢を正した。クラレイの緊張が伝わってくる。なんと紹介したものかと考え考え、彼は口を開いた。

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