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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 18

「なんか、それじゃ、――二人がつるんでおまえを騙そうとしてるみたいだぞ」
 さっきの言葉の、どこがどう、とはいえないが。
「そういう可能性もある」
 クラレイは意地悪げににやにやして、キラの憤慨ぶりを見た。
「なっ――おまえ」
 少なからず二人の人柄を知るキラには聞き捨てならない、叫びざま盥の中の湯をひっかけてやろうとしたが、
「いや、悪い悪い、冗談だって!」
 先をこされた。
 憤慨をもてあますキラをしりめに、クラレイはいった。
「……ただ、ちょっとは本当だ。一度、疑ったんだ」
「……」
「睨むなよ。いまは、その疑いも消したから――まあ、直感だけどな……王姉殿下の印象からは、なんというか、そんな、狡そうなところを感じなくて」
「……んなもん、感じたらおまえの眼ん玉はフシアナだ」
「と、おまえがいうなら、殿下の『公明正大』なのは保証つきだな」
「何を考えてそういういい方するのかは知らないけどな――」
 キラが半分呆れたようなのも当然、クラレイは明らかに何かたくらむ顔で、頬の片側だけで笑っている。
「……それなら、ごまかしなしでとことん話が聞けるな、って思ってるんだよ」
「アリエルを質問攻めにする気なんだな」
 と、キラはため息をついた。内心、(俺も一緒にその場にいるつもりだった……ってか、そうしとくべきなんだろうけど、あの話の長いオヤジに、さらに質問するだと? いったい何時間かかることになるんだ……)と、ゲンナリしている。
(……たのみますから陛下、途中でぐずるとかなんとか、しちゃって……)
 が、それも良くないと思い直した。クラレイをここまで連れてきた責任もあるし、それ以上に友人として、この一件は見届けるべきだろう。……クラレイが望まなければ別だが。
 と、
「そうだ――そういや、その話、俺も聞いていいのか?」
 いまさら気付いて、確認する。
「もし嫌なら……」
 いいつつ、(嫌かも)と思わなくもない。クラレイも知らない彼の父親の姿が暴かれるわけで、しかも、それがよい姿である確率はきわめて低い。
 ところが、
「聞けよ」
 いともあっさりと、クラレイは答えた。
「信用してる、っていったろ――あんたが特に聞きたくなけりゃ別だけど」
 ちょっと考えて、笑った。
「たとえば世間の噂どおりってだけで、てんでつまらないかもしれないわけだし」
「ん……でも、なにかすごい話が聞けるかもしれないし」
 いってから、(すごい話って何だよ)と、キラは自分に突っ込み、おのれの語彙の乏しさを呪った。
「すごい話ねえ」
 クラレイがいったからいよいよ後悔したが、意外に、クラレイは真顔だ。その暗緑色の瞳に不思議な光をたたえて、じっとキラを見つめている。そして。
「あんた、人を殺ったことがあるか? 俺、一年まえに――」

 沈黙。
 むしろ、静寂。

 そして。
「おい、なんか反応しろよ。一年まえでも二年まえでも、俺は何もやってないから」

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