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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 13

「この者の名前はクラレイ、俺の友達ですが、今から陛下の新しい友達でもあります」
「うん、わかった!」
 幼王は元気よくクラレイに頷きかけた。
「よろしくね、クライレ」
「……クラレイです」
「……レラレイ」
「クラレイ」
「クラルレ?」
「クラレイ」
「ラレレイ……」
「……もう、何でもいいです」
「うん、レレライ!」
 名前を正確に呼んでもらうのを諦めたクラレイの顔には、今度は作ったのではない微笑が浮かんでいる。……何割か、苦笑も入っているかもしれないが。
 エインゼルタインが、キラの袖を引っ張った。
「おてて、洗おう」
「え? 泥んこ遊びはおしまいですか、陛下?」
「うん。クレイレは泥んこにしちゃだめなの。カワイイから」
 キラは思わず、容赦なく汚された自分の服と、クラレイとを見比べた。
 堪えかねてクラレイが爆笑し、ついでに女官も笑い出した。女官のほうは、礼を失したと思ったか、それで慌てて退がってしまったけれど。
 小さな国王は、突然笑い出したクラレイを最初はきょとんと眺めていたが、ついで、つられるように満面の笑顔になった。
「レレレイもおいで! おやつあげる!」
「えっ? はっ…ありがたきしあわ、」
 王様からの下されものとあって、クラレイが急に慌てたふうにかしこまる。が、五歳児は聞いてはいなかった。彼の謝辞を遠慮なく遮って駆け出す。
 こっち、こっち、と袖を引っ張ってせかす幼王に従って、キラは早足になった。クラレイが所在なげに後をついてくる。
「キラが来るからね、おれのいちばんおいしいおやつ、ミゼーに作ってもらったの」
 王家専属の菓子職人の名を出して、王は自慢げに胸を張った。

 テラスの階段を駆け上って、屋内に戻ろうとする幼児を、キラは慌てて抱き止めた。
「?」
 急に抱えあげられて、エインゼルタインが首をかしげて彼を振り返る。
「だめですよ、陛下。このまま入ったらお部屋が泥だらけになっちゃうでしょう」
 キラは、屋内に敷き詰められた重厚なカーペットを見ながら諭した。王の私室にふさわしく、これ一つで屋敷が建つような品だ。
 父の教育の賜物か、貴族のくせに貧乏性が身についているキラである。
「足をお拭きしますからね」
 いきなり駆け出さないように約束させて、小さな体を地に降ろす。うながされるまま、王は素直に階段に座り込んだ。
「おいクラレイ、陛下の靴拾ってこい」
 ちょうどよく女官が手にささげ持ってきた、湯水を満たした銀盥と布を受け取りながら、キラは背後のクラレイにいった。
 命令口調にむっとする気配がしたが、彼は気にせず王の前に跪いた。


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