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ランドランド〜キラの旅立ち〜
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ランドランド〜キラの旅立ち〜 12

「おーい、こら。クラレイ」
 と、キラは声をかけて、
「陛下の『カワイイ』は『綺麗』と同意だ。花も鳥も、宝石も名画も、それから人も、みんな一括りだから、気にするな」
「……」
「ちなみに俺は、そんなこといっぺんも言われたことないけど。たしかに、おまえって美少年だし」
「……ふざけるな」
「俺は、陛下の通訳をしただけ。それとも、美少年より『カワイイ』のほうがいいか?」
「あのな、」
 言いかけたクラレイの言葉は、またしてもエインゼルタインの「だれ? だれ?」と尋ねまくる声に遮られた。
「クラレイっていうんです、俺の友達」
「キラの?」
 エインゼルタインは、またまじまじとクラレイを見て、
「コワイ」
 唇をゆがめた。
 慌てて、キラはクラレイを振り向いた。
「たしかにそうだよ。おまえ、なんでそんなに怖い顔してんだ。陛下が怯えてるだろーが」
 カワイイ発言で一瞬緩みかけた(というか、困惑のあまり少し情けないまでになっていた)クラレイの表情は、再び強張り……どころじゃなく、眉間には皺がよってるわ、眼には思い詰めたような光があるわ、初対面でこんな顔をされたら、キラだって思わず避けてしまいそうなものになっている。
「……緊張してんだよ」
 クラレイの答えに、キラは本気で呆れた。
「まだそんなこと言ってんのかよ。だいたい、もう本人を眼の前にして……見たら分かるだろ、要するにちびっこ……」
 これは、もちろん小声である。国王陛下を「ちびっこ」というのは、少なくともおつきの女官には聞かれないほうがいいだろう。
 クラレイは苦笑して、首をふった。
「陛下じゃない」
 なら、アリエルと会うことに今から緊張してるのか? とキラは訊きかけたが、
「あとで」
 クラレイは目配せして、エインゼルタインの目線あわせてしゃがみ込み、にっこりした。こいつよくも、とキラが思うくらい、よそ行きの、それだけに完璧な笑顔である。
「陛下。初めて御尊顔を拝し奉ります。お目通りをお許し賜り、光栄の極みに存じ上げ奉ります。キラ・ジークランドどのの友人、クラレイ・レジャンと申します」
「?」
 と首を傾げたのは幼王で、
「やりすぎ」
 ズバリ突っ込んだのはキラだ。
「昨日、作法の本で予習したんだ。こう言うもんじゃなかったのか?」
 笑顔から真顔に戻ってクラレイが言うのに、
「五歳児に通じる言葉を使え」
 囁いて、キョトンとしているエインゼルタインに言い直してやる。

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