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魔術狩りを始めよう
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魔術狩りを始めよう 28

「おやおや、キミは初対面の女性の名前さえ聞けないほど奥手だったのか。いや、私に迫ったということは幼女(ロリ)萌…」
「話を反らさないで下さい」
「石上御刻」
「へ? みこく?」
突如出た耳慣れない名前に、若月の目が丸くなる。
「そう。石上、御刻。私がこの世で心より尊敬するただ一人の人間さ」
 初めて見る観崎の真剣な表情。先の話の最中でも失わなかった軽妙さも、今は鳴りをひそめている。ふと思い出せば、昨日の電話の時も観崎は似たようなことを言っていた。
 ふたりの間に何があったかは分からないが、この態度を見れば観崎がどれだけ尊敬しているか、付き合いの短い若月にもよく分かった。
 だが、そのことも若月が彼女――石上御刻に対する警戒心を緩めることには不十分である。だから本当に御刻に任せていいかどうかの判断は、いまだに棚上げ状態だ。昨日の不可解な体験といい、そう簡単には信用できそうにない。
「っと、そう言えば先輩からの伝言だ。今日も少し話すことがあるらしいから、都合がついたら電話するそうだよ」
「あれ? 電話番号は教えて――、って観崎先輩が知ってましたね」
 ため息。プライバシーはないのか。
「ああ、私を誰だと思っているのかな。そこら辺の情報伝達に抜かりはないよ。先輩にはキミの氏名、電話番号に始まり学年・出席番号・小中高の成績・住所、さらに実家の――」
「ちょ、ちょっと待ってください! ――あんたはストーカーですか!?」
 成績や実家のことなど、いったいどうやって調べたのだろう。
「ハハハ、冗談は止めてくれ給え。ストーカー行為とは愛だの恨みだのと言った下らない感情があって初めて成立するものだろう。キミに対して何の感情も持たない私がそんな事をする筈がない。
 そう、つまりはキミの依頼を果たす為のれっきとした調査なのだよ、これは−−尤も多少なりとも私の趣味及び依頼人に対するウィットに富んだジョークのサービスも兼ねているのは否定しないがね」
「………………」
 観崎の答えに完全に気力を失う若月。
 全く笑えない以上少なくともウィットに富んだジョークでない事は明白である。
「ふむ、喜びの余り声も出ないところ悪いが、昼からの授業に間に合う様そろそろお開きにするとしよう−−それでは若月クン、先輩に観崎が宜しくと言っていたと伝えてくれ給え」
 そう言うと項垂れる若月を一人残してさっさと出て行ってしまった。


「……つき、若月」
「…………はっ!」
 気付くと教室で自分の席に座っていた。
「どうしたんだ。ボーっとして。もう施錠の時間だぞ」
 そう言われて窓の外を見るとすっかり日が傾いている。
「はぁ……」
「はぁ、ってお前−−まあいい早く帰れよ」

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