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もう一人のわたし
その他リレー小説 - 二次創作

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もう一人のわたし 9

気配は扉のすぐ外まで迫ってきていた。数が多い感じではない。
しかし、おかしい。人間ではないと思わせる何かが、そこにいる。
「どうすんの、げんえい君」
「ふふ、こんなこともあろうかと、あいつらこんなものまで用意してくれていたぜ」
私の小声に小声で応じたげんえい君は荷物の塊の中から握り拳よりもうちょい
大きいかというほどのプラスチックの箱を取り出した。
のっぺりとした暗色の箱だが、金属の端子っぽいのが上部から二つ飛び出ている。
「スタンガンだ。こんなのまであいつら作れるんだな」
ちょっ。どこまで器用なんだ。と思ったが、廃工場の電気系統を
回復させるぐらいだからこれぐらい作れるか……
「向こうが入ろうとした瞬間、逆に俺が敵の意表を突いて突っ込む。まりあは安全な場所に隠れろ」
「ダメだよ、他に何か武器はないの? 戦力は多い方がいいでしょ」
げんえい君は私の説得をあきらめたかのように一息つき、後ろに目をやる。あっちに隠れて構えておけという意味か。
「……気持ちはうれしいけどな。なら、何か適当なもの持って、何かに隠れて見てろ。
 俺に何かあったら、どうにかして戦うなり逃げるなりしろ。なに大丈夫だ、この気配だと敵は一人だな」
その気配がもうそこまで迫ってきている。私は皆が持ってきてくれた荷物の中から
武器っぽいものを適当に取り上げると、後ろの机に隠れた。
「……」
げんえい君は黙って扉を見つめる。私も後ろからそれを見つめる。
扉は部屋の外へ開く構造だ。扉が開きかけたその瞬間、げんえい君は扉を蹴飛ばし全開にする。
果たしてその向こうにいたのは人間のような姿をした何か。
一見、異常に痩せた骨と皮だけの子供。腹のみが異様に突き出た、まるで飢えた姿。
異常な眼光の鋭さと青黒くなった肌が確かに人間でないことを告げている。
その人型の何かは突然扉が開いたことに不意を突かれた様子で、人の声とは思えない甲高い鳴き声を出し身構える。
「でぃやぁああ!!」
そして叫ぶ、げんえい君の手からスタンガンが放たれ……
そう。文字通り投げ放たれて、投げられたスタンガンは見事ストレート、敵の頭部を直撃。
(って、それはそう使うもんじゃないだろぉおおおう!)
突っ込みを入れたくても入れられぬまま見ていると、
その小さな人影が動きを止めた。しかしまたすぐ元の体勢に戻り、徐々に近づいてくる。
「効いてない!? くそっ!」
そしてげんえい君はなんと肉弾戦を始めた。両腕から繰り出される打撃、
怯んだところへ突き出される蹴りに敵はだんだんと気圧されていく。
しかしその打撃の隙、敵はその小さな体躯を生かしてげんえい君の懐へ入り込み、
鋭い爪のようなものを振り上げて攻撃してきた。
「危ねっ!」
げんえい君は間一髪でその懐からの斬撃をかわしたが、体勢を崩してしまう。
一方、敵は続けての攻撃へ向け鋭い爪を出したまま距離を詰めてくる。
(このままではげんえい君が危ない!?)
そう思った途端、わたしの体は動いていた。敵は意外な所からの参戦者の出現に驚き、一瞬止まる。
その停止を私は見逃さず、既に手にしていた武器を力任せにその敵へぶつけ斬る。
と、攻撃した今やっと気付いた。この武器は剣だ。両手で持って振り回すタイプの。
そしてその剣は見事、敵を真っ二つにしている。その刀身に血痕などはない。
斬られた敵の姿は、そのまま塵へと変わっていった。

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