欠片 2
いつものように、眠りにつこうと思ったとき、誰かに肩を叩かれた。
顔を上げると、
「ねぇねぇ、君の名前は?私は、桜っていうの。一緒に教科書見せてくれない?」と小声で笑い掛けてきた。
「ちょっと!止めなって。館花クンは……。ほら、教科書なら私が…」とミキが制止しようとするが、俺が一瞥すると口をつぐんだ。
しかし、桜はその様子を気にすることなく
「へぇ〜、館花君って言うんだぁ♪ねぇ、下の名前は?なんて言うのかな?」
俺は、これ以上関わって欲しくないので、無言のまま教科書を渡し再び、机に頭を埋め無視を決め込んだ。
「ふ〜ん、結矢っていうのかぁ、じゃあ、ユー君ね♪」桜は教科書の隅の「館花 結矢」という文字を見て言った。
不意に寒気がした。足に走った痛みをこらえ
「やめてくれ」 と声を抑えて言った。
桜は気にせず言った。
「え〜?かわいいと思うんだけどなぁ」
耐えられなかった。放っておいて欲しかった。俺は、先生に、具合が悪いので保健室に行くと告げ教室から出て行った。
重い足を引きずり保健室の扉を開く。
「おっ、サボリか少年。まだ、一時間目だぞ。」
「冗談はやめてくれ。ただでさえ、気分が悪いんだ。」
「わかった。悪かったよ青年。久しぶりに来たからからかってみただけじゃないか。ほら、診せてみな」
「ああ、………。」
キーンコーン カーンコーン キーンコーン カンコーン
「ちょっと!!桜!!あんたはなんで蜂の巣を突っつくようなことしてくれちゃってるのよ」
「え〜?私何かした?」
「え〜?何かした? じゃないわよ!相手はあの館花よ。確かに、見た目は普通…より、良いかもしれないけど、あいつは私たちより少なくとも二歳位年上よ。しばらく、学校に来てなかったらしいのよ。理由は私たちが入学する前だからわからないけど」
「でも、クラスメートだよ♪友達じゃないの?」
「その、クラスメートをぶん殴ったのよ。二学期に突然復学してきてすぐ。まぁ、殴られた側にも問題があったんだけど」
「ほら、何か理由があったんだよ。それに、ほら、教科書も貸してくれたし…。きっと、優しい人だよ。」
「甘い、甘い、あまぁ〜いわ!ザッハー・トルテより甘いわ!あいつは何も知らない転校生を優しさという罠にかけて……。キャ〜!
ともかく、あいつは危険よ話しちゃダメよ。わかった?」
「え〜?そんなんには見えなかったけどなぁ」
「えーも、びーもしーもないの!とにかくダメよ」
「うん…。」