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おれが監督!
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おれが監督! 2

「桜森学院、春夏連覇達成ー!」
アナウンサーが絶叫した。マウンド上でナインが集まり歓喜の輪が出来る。
その輪の中に笑顔の山田の姿があった。
桜森学院は盤石の強さを夏でも見せつけ、花巻西も準々決勝で破っている。
山田の嬉しそうな姿をテレビ越しに見つめる棚橋。
「今度は俺があの舞台に立ってやる」
そう誓った。

しかし高校野球は甘くない。
棚橋が2年時には夏の決勝で城北義塾に敗退。秋の県大会でも準決勝で南国学園に惜敗している。
今年こそは、そう誓った棚橋3年の夏。
土佐学院は順調に勝ち進み決勝へ。決勝の相手はまたも城北義塾。

「絶対勝つ!」
自ら気合いを入れマウンドに立った棚橋。
「ストライク、153キロ!」
初回からギア全開で快刀乱麻のピッチングで城北義塾打線をねじ伏せる。
一方味方打線も幸先よく序盤に2点を先制。
流れは完全に土佐学院だった。

しかし、7回頃から疲労で棚橋の球威が落ちてきた。
8回は何とか抑えるが、9回1アウトから四球で5番三笠を歩かせると、続く小池にはレフト前ヒットを浴びる。

汗を拭う棚橋。迎えるは今日無安打の関根。
「(絶対抑えてやる!)」
そう意気込んだ棚橋のストレートは真ん中高めの甘い球。球速も落ちていた。
カーン!
フルスイングしたその打球はレフトフェンスを越える起死回生の逆転3ランホームラン。
崩れ落ちた棚橋。
県ナンバーワン右腕の夏は無情にも終わりを告げた。

中学日本一投手で、ドラフト1位候補とも言われた棚橋を擁しながら、3年で甲子園1度の出場に止まった土佐学院。
これにより、ライバル校に遅れをとることになる。
翌2年は県大会ベスト8止まり。土佐学院はもう古豪と揶揄されたりもした。

そんな中、生徒数の減少により土佐学院は近隣の高校と統合することが決まった。
土佐学院の名前もあと僅かで消えることになる。
そこで土佐学院の校長以下学校関係者はあの人物に監督就任を依頼する。

その人物とはかつて全国制覇を成し遂げた丸山だ。
70歳を過ぎた今の丸山は、近所の子供たちに野球を教えたりしていた。
「丸山さん、もう一度、校名が変わる前に土佐学院を日本一の高校にして下さい」
丸山は難色を示したものの、
「…これが本当に最後ですよ」
丸山監督が遂に復活したのだった。

このことで土佐学院には再び有望選手が集まり出す。
丸山復帰1年目は夏ベスト16に終わるが、秋はベスト4。
そして2年目は選手層が更に厚くなり、強打の火の玉打線が復活した。
投手も右腕西川、左腕酒井の二本柱が安定したピッチングをみせる。
夏の高知大会は順当に勝ち進み、決勝では宿敵城北義塾を3ー1で下し甲子園出場を決めたのだった。

『名将丸山復活』とスポーツ紙も取り上げた。
土佐学院の勢いは止まらない。
丸山の指導、采配によって土佐学院の選手達は甲子園の舞台で躍動した。
甲子園で次々と強豪を撃破し、久しぶりに決勝まで駒を進めた。
決勝の相手は近年圧倒的な強さを誇る桜森学院。

そんな強豪相手でも今の土佐学院は屈しない。
エース西川が力投し、4番高田が目の覚めるような弾丸ライナーをバックスクリーンに運ぶ。

選手それぞれが自分の役割をきっちり果たし、いよいよその時が来た。
西川渾身のストレートが、桜森学院4番竹下のバットの空を切り、捕手荒木のミットに収まる。
「ストライクバッターアウト!土佐学院優勝!全国制覇です!」

スタンドで見守った学校関係者はその瞬間を喜んだ。
「校名が変わるラストイヤーによくやってくれた、丸山さんありがとう」
校長は号泣しながら丸山に感謝した。
「ふぅ、これで私の役目は終わった」
丸山もベンチで安堵した。

それから5年後、丸山は病に倒れ亡くなるが、死後その実績を高く評価され野球殿堂入りを果たすのであった。
【完】


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