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太古記
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太古記 1

西暦184年、後漢朝は危機に頻していた。
張氏の兄弟が起こした反乱は国内全域に拡がり、朝廷は反乱を鎮めようとしたが目立った成果は挙げられていなかった。
腐敗した朝廷に不満を持つ者達は次々と首領・張角の元に集い、反乱軍は全国で五十万にも及ぶ大軍に膨れ上がった。
彼らは黄色い頭巾を目印としたため、人々はこれを『黄巾党』と呼び恐れた。


ここは洛陽の都から北に遠く離れた地、琢県楼桑村。三百戸ほどの小さな宿場町である。
かつては多くの旅人で賑わっていたこの町も、黄巾党が出没するようになった今ではすっかり寂れてしまっていた。

その日、村の広場には珍しく人だかりが出来ていた。そこには一枚の立て札が掲げられている。
「これは何て書いてあるんだい?」
「え〜と…黄巾賊討伐のため義士を募る…とあるな」
「ついにワシらのような百姓にまで助けを求めにゃならなくなっちまったのか…」
「確かに黄巾賊は憎いが、俺達は槍の持ち方一つわからねえしなあ…」
「俺は行くぜ!」
一人の男が言った。
「戦は無理だが、例えば軍馬に飼い葉をやるのだって戦の助けにはなる。俺達は俺達に出来る事をやれば良い!」
「確かに…黄巾賊をこのままにしとく訳にゃあいかねえからな。俺も行く!」
「俺も行くぞ!」
「俺もだ!」
そう言うと男達は役所の方へ一目散に走り去ってしまった。

「ハァ…」
彼らが去った後にはムシロを担いだ青年が一人、冴えない顔で溜め息をついていた。
青年はしばらくの間、立て札をじっと眺めて何事かを考えているようであったが、やがて諦めたように歩き出した。
「おい、お前!」
「へ…?」
突然呼び止められた青年が振り向くと、そこには髪と髭を逆立てた恰幅の良い大男が肩をいからせて立っていた。
「お前はこの立て札を見て何も感じなかったのか?さっきの奴らのように天下国家のために立ち上がろうとは思わなかったのか!?」

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