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無頼エスパー・シヴァ
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無頼エスパー・シヴァ 3

 自嘲的な態度であったが、女の顔に同情の念は浮かんでこなかった。むしろ蔑みの目でサイボーグを見る女。
「だから投げるの?虚勢張って、弱い者苛めして、でも、結局は曲げてるんじゃない」
 物怖じしない堂々とした態度だが辛辣な言葉は男達の逆鱗に触れた。
 誰より先に怒号をあげ、一枚板のテーブルをクッキーのように粉砕するサイボーグ。無感覚部分の多いサイボーグは元々情緒が不安定である。それを挑発したのだからもはや手に負えるものではなかった。
 面倒を避けようと客は次々に退散し、店主もカウンターの奥に姿を消す。
 しかし、当の本人は至って冷静に、腰に帯びたプラスターピストルを抜き放ち、相手を牽制する。
 殺傷レベルに設定はされていなかったが、天井の梁に黒い焦げ跡を残し、相手の動きが一瞬止まる。
「あの姐さん、無茶苦茶だなぁ……」
 一人逃げずにいたシヴァが猪勇を見せる女の行動に、呆れたとも感心したともつかない言葉を漏らした。田舎の改造人間がデフレクターシールドを装備してるとは思えないが、それでもブラスター一丁で手に負える相手でもない。
 そこへ、イワネズミがシヴァの肩に乗り、何事か訴えかける。
「俺だって、美人が酷い目に遭うのは忍びないけどよ、凶状持ちが人助けって言うのもなぁ…」
 渋るシヴァだったが、次の瞬間イワネズミに耳たぶを噛み付かれ、思わず飛び上がる。
「分かった、分かったよ」
 そう言って重い腰を上げるシヴァ。見ると女はテーブルを引き倒してその後ろに隠れており、銃で威嚇していた。しかし、予備のパワーパックを持っているとも思えず、捕まえられるのは時間の問題である。
「やあやあ、お兄さん方。何があったかは知りませんが、仲裁は時の氏神と申します。ここは何とか納めてもらえませんかねぇ」
 場にそぐわぬお気楽男の登場にならず者達は思わず呆気にとられた。
 そんな男達の様子などお構いなしに、気楽に歩み寄るシヴァ。
「何だぁ!?関係ない奴はすっこんでろ!」
 元が人間とは思えない野獣のような顔を向けられたが、無論シヴァは意に介さず、リーダーと思しき改造人間に歩み寄り、肩をぽんと叩く。
 次の瞬間、改造人間はがくりと膝を落とし、狼狽した声を上げた。
「なんだぁ?体が動かねぇ…」
 シヴァの指先からデジタルインパルスが発せられ、サーキットに異常をきたしているのだが、男達にそれが分かる筈もない。
 他のごろつき達もシヴァが体を撫でるだけで昏倒してしまい、酒場は途端に静寂に包まれる。
 それまで事態を静観していた女は、男達が動けなくなったことを知ると訝しげな表情で姿を現した。
「あなた、パラが使えるの?」
 改造人間が自分の手で自らの頭を殴りつけているのを見て、女はシヴァにそう質した。
「さあて、よくわかんねぇけど、整備不良なんじゃない?」
 そう言ってとぼけるシヴァ。無論、そんな言い訳が通用する筈もないが、この場はそれで通すしかない。
「ふうん?」
 しかし、女は値踏みするような目で眺め回す。

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