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Gear〜鍵を成す者〜
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Gear〜鍵を成す者〜 9

「それは限られた人だけです」ベルーナは頬を膨らませながらブーブー言っている。

城の中はシンプルな造りをしており、白い壁に所々絵画が飾ってある。そして、ほとんどの扉が立入禁止とあった。
「あ、この部屋入っていいみたいです」ベルーナは何度も“立入禁止”でない事を確かめてシオンに言った。
「入るしかありませんね」シオンは扉を開く。
“王の間”。そう立て札があった、その名にふさわしくその部屋は大きく、豪華な造りをしている。
赤い絨毯(じゅうたん)が扉から奥へとのびている。二人は視線をその先に送った。
ゴクン、ベルーナは生唾を飲み込んだ。
「こ、これは…」
「“パレイオス”……ですね」シオンはそれを睨むと、前に進みはじめた。
二人の前にあるのは無数の槍が刺さって倒れている竜、二本の大槍が交差して、床に首を押さえつけている。
「見学者が入れるのはここまでです」
二人は竜に目がいき、そこに立っていた番兵たちに気付かないでいた。
「すみません、ついつい見惚れてしまって」シオンは頭を下げた。
「無駄に兵の数が多いな……」ベルーナが舌うちする。
「そんな事ありませんよ?」突然二人の後ろから男の声が聞こえた。
「はじめまして旅人さん、この城を任されている、カッツと申します」白髪頭の男は右手を腹に当て、深く頭を下げた。
「いやあ、“パレイオス”をご存知の旅人さんには、初めてお会いしますよ」カッツの口元は笑っている。
「“はじめまして”カッツ…さん」シオンの笑顔はひきつっていた。
カッツはシオンから目をそらすと、何やら解説を始めだした。
「あそこにいる竜、パレイオスは、世界を破滅させる為に造られたと、聞いています。しかし今では、我が国になくてはならない存在です」カッツは二人に背を向け歩きだす。
「ははあん、貴様は世界を破滅させる気だな?」ベルーナは冗談めかしてそう言った。
そして何度も頷く。
背中を見せていた男が振り向いていう「“破滅”は望んでいません、私が望むのは……“統括”です」
「……」シオンは冷めた目で男を見ていた。
「歴史を振り返ると、今までこの大陸を、この世界を、征服しようとした者がどれだけいたか……、彼らは失敗した、しかし私はこの竜を使い、それを成し遂げられるだろう」
カッツの解説は、彼の口元がニヤついて終わった。

「“世界征服”か……夢に満ち溢れた話ですね?」城を出るとベルーナがそう言った。
彼女は二本の剣を兵士から返してもらい、それをクロスさせた状態で背中につけた。

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