THE ENDLESS 80
そして、立っているのが辛くなったのかその場で座を組んだ。
その肩を、戦闘の終結を見てやって来たクゼンが叩いた。
「これで、撃破って事に、しときます」
クゼンは律儀に対応する。
「有難うございます…桃樹さん、二人の回復を」
「え!?何で?」
一緒に来ていた桃樹が驚く。無理もない、目の前にいるのは味方のアジェストと、それを倒した敵なのだから。
「頼みます、今まともに回復が使えるのは貴女だけなんです」
その言葉に、桃樹の思考回路は素早くある答えを出した。
更に確認の計算をする。
自分だけできると思われている+クゼンが二度も頼んでいる→頼りにされている!!!!
「分かりましたクゼンさん!僕にお任せあれ〜♪」
妙にテンションの上がった桃樹は、大仰な仕草で二人の回復を受け持った。
目立った外傷は無いが、覚醒終了後も無理に動いた二人は身体内部の損傷が激しく、完全回復にはかなりの時間を要した。
「……という訳で鞦韆君とそこの…えー」
「歩み来る…来歩(ライホ)であります」
「来歩君が新しいメンバーになります」
「ちょっと待って下さい」
シルセナが口を挟んだ。
「鞦韆君については話を聞いたので分かりますが、そこの鎧さんは何故仲間になるんですか?展開が早過ぎて話が見えないんですが…」
「来歩はシェンザに売られたんですよ」
鞦韆が説明する。
「あいつは自分の配下は自分で調達する代わりに、扱いが酷くて…新入りとかレベル低い連中は今日の来歩達みたいに捨駒にされるんです」
「確かにそれじゃ戻れないか…」
納得した所でクゼンが再び口を開いた。
「アジェスト君」
「何」
「君は異議は無いんですか?」
皆がアジェストを見た。
アジェストは鞦韆に負けた。
アジェストの事、本来ならば真っ先に不平を言ってもおかしくない筈である。
それにも拘らず、不平どころか今まで一言も言葉を発しないのはどういう事なのか。
「俺は全力で闘った。そして負けた。そいつを認めるのは当たり前だ」
ジークと桃樹は顔を見合わせた。
「アジェストがあんな大人な事を言うとは…」
「僕もびっくりした」
「聞こえてるぞてめぇら」「あ」
最後の『あ』は鞦韆である。
「忘れてた…時間差でmysticの襲撃が…今頃戦闘中や…」
「待てよおい!!」
「ど、どうしよう!早く行かないと!」
桃樹が慌てた声を出した。ジークの顔にも焦りの色が浮かぶ。
「クゼンさん、援軍に…」
「それは困りますな」