Gear〜鍵を成す者〜 8
ベルーナは首を傾げる。
「………」シオンは何故分からないの?という顔をする。
「我が国へようこそ」
門の前に立っていた番兵は、快く二人を迎えてくれた。
「いくらだ」ベルーナが番兵に何かを尋ねた。
「え?」番兵は返す言葉が見つからない様子でいる。
「……いくら出せば黙って通すのかと聞いている」ベルーナは番兵の耳元でささやくように言った。
「……」シオンは黙ってベルーナを後ろにさがらせると、番兵から小さな建物に案内してもらった。そこで入国手続きの紙を受けとる。
「ありがとう」番兵に向かって微笑むシオン。
「あ、えと……分からない事があれば何でも聞いてくださいね?」番兵は顔を赤くしながら門の警護に戻って行った。
「ベルーナさん?」ひきつった笑顔でベルーナの顔を見つめるシオン。
「……そんなに見つめないでください、恥ずかしいです……」ベルーナは頬を赤らめる。
「……はあ…国に入ったら騒ぎを起こしたりしないでくださいよ?」シオンは不安そうな顔をする。
大きな門はゆっくりと開かれ、二人は門の向こう側へと進んだ。
「マーリンの言う通りならこの国のどこかに“あれが”…」シオンは顎をつかんだ。
「私が考えるにすごい物は大抵、城の中かと……」ベルーナは眼鏡の真ん中を指先で少し上げてみせる。
『騒ぎを起こすな』シオンの頭の中をその言葉が何度も浮かんでくる。
「参りましたね、城を見学できるという話なのでとりあえず、見学しに行きますか」シオンは軽く頬をかく。
「見学、ですか?」ベルーナは一瞬難しい顔をしたが、すぐに賛同した。
「長い橋でしたね」後ろを振り返るシオン。
湖の上に一本の頑丈な橋がかけられている。湖の真ん中に人工の島があり、その上に城が存在していた。
「“見学”できると聞き、城に探し物がないのではと思いましたが、あるかもしれませんね……この要塞に」ベルーナは視線だけを左右に動かした。
ベルーナの赤い目の先には、いくつもの砲台が並べられている。
「飾りであってほしいですね」シオンは苦笑しながらそう言った。
二人は城の中に入る前に持ち物を預ける事になった。ベルーナは大きな鞄と背中にあった二つの剣を、シオンは預ける物を持ってなかった。
「持ち物は邪魔になるだけですよ」シオンは笑う。