Gear〜鍵を成す者〜 5
「あと一人と一匹…」リオが呟く。
「分かってるな?」赤兎がそう言うと、リオは頷いた。
赤兎は、逃げるテアの速度にあわせてその隣を走る。
相手が剣を振り上げた瞬間、リオはそれを払い落とし、戦斧を突きつけた。
「もう味方はいない、降参してください」リオが戦斧を振り下ろした。テアは倒れ、乗っていた者は前に放り出された。
バシッ、リオは放り出された追跡者の首ねっこを掴んだ。
そしてそのまま深い森へと消えた。
黄金色の髪を束ねた少女が目覚めた。見えるのはえだぎの間から見える星空。聞こえるのは火の弾ける音と、二つの声。
彼女は横目で音の聞こえる方を見る。その蒼い目に映ったのは黒髪の小柄な少年と、桁違いの大きさのテアだった。
──あれはリオ!?何で私はこんな所に…
焚き火を囲んで丸太に座っている少年は、彼女が追っている人物だった。彼の暗殺を命じられていた。
彼女は股についているはずのナイフを探した。しかし、それはなかった。
「探し物はこれかい?」少年の声がした。
リオだった。リオは彼女のナイフの端と端をつまんでいる。
バチバチッ、ナイフに電気がはしり、それは薪(たきぎ)に姿を変えた。そしてそれは焚き火に投げられた。
バサッ、少女は自分にかけられていた布をはらい、距離をとる。
バチバチッ、少女の手から音がした。その手にはナイフが握られている。
「錬金術か…」リオがゆっくり立ち上がった。
「近づくな!!」少女は両手でナイフを握り、それをリオに向ける。
「どうするんだ?」大きなテアが喋った。
「こうする」リオはかがんで地面に手をつけた。
地面につけられた手を中心に光が円を描く。
「…まさか錬製陣!?」少女はナイフを構えながら一歩ずつ後ろへさがっていく。
「これでも“元”特務隊なんでね」
ガッガッガッ、地面から鋼鉄の壁が現れ、彼女の逃げ場がなくなった。
──この位の高さの壁なら飛べる!!
少女が地面に手をつくと小さな錬製陣が現れ、地面から小さな四角い物体が生えてきた。彼女はそれを踏み台にして飛んだ。
そして、とどかなかった。彼女が飛んだと同時に、鋼鉄の壁もその高さを増したのだ。