Gear〜鍵を成す者〜 31
「さてと…、どんな化け物かな?」
ボッ、ボッ、ボボボ…、突然暗闇に明かりが灯る。巨大なホールが火の光に照らされ、よく見えるようになった。
「炎の化け物ねえ…」
ドスンッ、何かが天井から降りてきた。リオは軽く後ろにさがる、そして降ってきた者を認識する。リオの目の前には炎をまとった獅子がいた。
「魔獣…、かな?」
「…私が精霊にでも見えるかね?」
「話ができる魔獣とは、また高貴な魔獣がいるものだ」
「私はお前を見張れと言われている」
「分かってる…、僕だってタダじゃ死なないさ」
「…ならばついて来い、この道の先に外への出口がある」
「…え?」
「確か錬金術師だったな?私はゴンドラに“人質”をとられている、救ってくれるのであれば礼をしよう、もしこの話を断われば、お前は私に殺されここで死ぬ」
「…悪くない条件だ、案内をしてくれ」
魔獣は火の粉を振りまくと反転し、リオの前を歩き始めた。
「悪いが案内できるのは途中までだ」
魔獣の低い声がトンネル状の通路の中で響く。
「大丈夫、僕これでも錬金術師だから」
魔獣は振り返りリオの顔を見つめ間をおくと、前に向きなおし再び歩き始めた。
「この通路では錬金術は使えん、わざわざお前を案内するのはそれ故だ」
「はは…、知ってたんだね」
リオは頬をかくと口元がピクピクと数回動いた。
「牢人の事ぐらい把握している、これが私にとって最初で最後の試みだ…、仕損じるなよ」
魔獣の炎で長い通路を照らしながら歩いていると、石畳の上に赤いじゅうたんが見え始めた。リオは不思議な顔でそれを見つめる。魔獣の表情は曇っていた。
「相手にとって私の行動は予想内の事だったようだな…」
「どういう事?」
「この先にもうひとつホールがある、その先に答えがある」
赤いじゅうたんの先に光が見え始め、二人はその光へゆっくりと進んだ。
光の先にあったホールの真ん中には、男が一人立っていた。ゴンドラの兵士の首を掴んでそれを掲げ笑っていた。そして兵士を投げ捨てるとリオに顔をむけた。
「待っていましたよリオさん、“鍵”渡してもらえませんか?」