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Gear〜鍵を成す者〜
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Gear〜鍵を成す者〜 3

老人は穏やかな目でお礼を言うと、リオの肩を叩いて小さな袋を手渡した。
「これは?」掌にのせられた袋は小さく、そして重かった。
「誰にも渡してはならん、よいな?」
老人はリオが頷くのを確認すると、背中を押して部屋から追い出した。トマのテアと共に。
「これから…どうするんだい?」リオは廊下を歩いたままテアの顔をのぞく。
「どうもしない、次の主に仕えるだけだ」迷いなくテアは即答した。
「次の主なんだけど…ぼ――」
ダッダッダッダ、人の足音がリオたちの背中から聞こえる、彼らが振り向くと、兵士たちが先程までいた部屋に入って行った。
扉は開いたままで、部屋から声がもれている。
「マーリン様、お分かりですね?抵抗はしないでください」男の声が途絶えると、部屋から兵士たちと“老人”マーリンが歩いて出てきた。
「マーリン様…」リオが左右の腰についた剣を抜こうとした。テアがそれを止めた。
「待て、死ぬ気ではなかろうな…お前は殺させない、トマと誓ったんだ」テアがリオの前に立ちはだかる。
目の前のテア。それにトマの姿がぼんやりと重なった。
「…わかった」
剣から手を離すリオ。そのすぐ横を五人の兵士とマーリンが通りすぎて行った。
「僕の部屋においで、今日は疲れただろう?血も落とさないと怪しまれるしね」リオは満面の笑みを浮かべて話しだす。
まるでマーリンとは無関係であるかのように。
「ここが僕の部屋だよ」と、リオは扉を開けて一言。扉を閉めると彼はそのままシャワールームに向かって行った。
テアは部屋の奥に目をやった。窓の下に机がある。そこに立掛けられた写真、そこにはリオと彼のテア、そして銀髪で茶色い肌のトマがいた。
フッ、テアは小さく息を吐いた。
「そうだ、“赤兎”(セキト)君もシャワー浴びないかい?」シャワールームからリオの声がする。
赤兎は壁にかかっている鏡を見た。その姿は名前どおり赤くなってしまっていた。しかし彼はそれを断った。
「遠慮しておく」
窓の外では雨が降っていた。
窓の外を赤兎はぼーっと眺めていた。そしてドアのむこうから近付いてくる足音に気付く。
「リオ、誰か来る」扉を睨み赤兎が言う。
バタンッ、オートロックの扉が突然開けられた、落ち着いた声で赤兎は言った。
「どうかされましたか?」
部屋に入ってきたのは青い軍服を着た体格のいい男だった。手には長い鉄の棒を持っていた。
「ここにリオという者がいないか?」男は部屋を見渡すように首を振る。シャワーの音と雨の音が混ざっていた。

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