Gear〜鍵を成す者〜 13
「それは……」
「それは?」
「秘密です…」シオンは笑うと、首を傾げてみせた。
「まあ、そういうのも悪くない」そう言うとベルーナは顎をつかんだ。
「お通りください」兵士はなんの疑いもなく二人を城に入れた。
ベルーナは怪訝そうな顔をして言った。
「これが偽物だって思わないんでしょうか」
シオンは階段を上がりながら口を開く。
「よく見てみてください、このサイン青く光ってないですか?……これは特殊な錬製でできていて、書き換えや焼却、といった事ができないようになっています……でも術者が死ぬと燃えて消えてしまうのが難点ですね」
説明を聞いてベルーナは掌をポンッと叩き頷いた。
『なるほど』
声が二重に聞こえた。
「あれ?喉の調子が……」ベルーナは喉をつまんであーあー変な声を発している。
「あなたに問題はありません、彼です」シオンが上の階へ視線を送った。
「来てくれてありがとう、侵入者さん」三人の男たちが上の階から降りてきた。
左右にいるスキンヘッドの男は二人とも、筋肉質で袖のない服を着ている。真ん中の男は逆だった金髪をして、体型はやせている。
「分かってるんだぜ?この時を待ってた、お前達をここで倒せば昇進は間違いない」そう言うと真ん中の男は剣を触った。
ヒュッ、風を斬る音と共に真ん中の男の髪がなびいた。
ドサッ、そして左右の男は仰向けに倒れた。
「お、おい……」金髪の男は剣に触れたまま、それを抜かないで呆然としている。
「相手が悪かったな、そこを黙って通せ」ベルーナはそう言うと背中に剣をしまった。
「申し訳ないですがあなたがたに付き合ってる暇はありません」シオンは少し早口で言う。
「ちっ覚えてろ!!」男は急いで二人に背を向け走りだした。
「いいんですか?逃がしちゃって」シオンが笑う。
「いいんです、倒れてる二人もみね討ちですし……それより先を急ぎましょう」
ベルーナはウィンクをして、拳を高くあげた。
「そうですね、“聖剣”が待ってますよ、きっと」二人は顔を見合わせ頷くと、上の階へ走りだす。
階段を登りきると、その扉がすぐ目についた。“立入禁止”の部屋はなく、まっすぐとのびた廊下の先にあるそれは、不気味な雰囲気を漂わせていた。
「……待ってください」走ろうとしたベルーナをシオンが止めた。