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素顔
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素顔 1

通りは 真っ暗

その端に車を寄せて 邪魔にならない程度の音で 曲を流す
後ろの席には シートにもたれかかり 目を閉じている方
ここ何日も こんな状態
目を閉じていても わかるくらいの 美形
(この人 モテんだぞ)
そう
はっきり言って モテる
キャバクラなんかいったら そりゃあ すごいんだからな
ちょっと 俺も おこぼれに あやかるんだけど



そんなモテる この お方を 毎晩のように 待たせる女!
ハッキリ言って 俺 わからん
今までに 遭遇したことない女
初めて会ったときは そう 可愛いって思えた

が しかし

翌日からは とんでもない
言いたい放題の まさに ”じゃじゃ馬”って感じ

この方は なに言われても ニコニコしてる
俺は 逆
(なんじゃ その言い方は!)
女じゃなけりゃ・・・いや 女だとはいえ 許せん
この お方が こうして 待ってるような女だから我慢してるだけで
俺は 何度も もう 声には出さず ブチ切れを我慢してる
ルームミラーで いつものように 歩いてくる姿を確認
「帰ってきたみたいです」
急いで 外にでて ドアを開ける
ちょうど 開いたタイミングに 女が 横を通る

「お帰り」
(そんな優しい声で言ったって この女には 響きもしませんよ)
心の中で 毒吐く俺
女は 下から上まで 睨むように見て 横に立つ俺にも ちらっと視線をよこす
「また 来たの?」
出たよ
ほらな?
この言い方
どんだけ 待ってると思ってんだよ
お前みたいな女をさ
モテんだぞ?
知らないだろ?
なんか 今 ちょっと 間違ってんだ きっと 見る目が
たぶん ちゃんとしたら お前なんか ポイッだ ポイッ
「メシ どうだ?」
「いらない お腹減ってないし」
こちとら お前を待ってて 減り倒してんだぞ
付き合えよ ったく
「そっか」
ここで それ以上 言わない このお方
紳士だな
違うわ やっぱり
”グゥゥゥゥゥ・・・・・・”
(ん?)
いや 俺じゃない
隣り・・・・・・いや 違う
(コイツかよ)
下を向いて 笑いを堪える
「腹・・・減ってんだろ?」
ちょっと 笑いを耐えながら 優しく気遣う
なんて できた人なんだ


「べ、べつに・・・・」
と言いかけたところで 再び
”グゥゥゥゥゥ・・・・”
これには たまらず 笑ったね
「おいっ トシ」
「ス、スイマセン」
でも ほら 笑えるだろ?
顔 真っ赤にして 女は 下向いちゃってた
「俺 実は なんにも食べてなくてさ 腹減ってるんだったら付き合ってくれないか?」
そんな優しい言い方 この女には いりませんよ ったく
真っ赤な顔を上げて
「だから 何回も言ってるじゃないですか。私 そっちの世界の人 嫌いなんです」
出たよ
何回も 聞いた
これで 何回だ?
この お方
”早瀬 領”と おっしゃいます
早瀬組の看板背負ってらっしゃいます
持ち歩く名刺には 「早瀬不動産」って なってますが・・・
「わかってるよ 何回も聞いたから」
それでも こうして待つって どこがいいんだか 俺には わかりません
「食事だけ 腹が減ってる同士 いいだろ?」
いや コイツじゃなくとも 俺が お供させていただきますから
「奢るよ 美味いモン」
この笑顔
他の女が見たら ぶっ倒れるぞ
コイツには 効き目ゼロみたいだけどな
「いいです・・・・自分で払いますから」
ゴニョゴニョ言いながらも とりあえず 車に乗った女
ずっと 外見ながら 会話ナシ
た、耐えきれん…俺
「曲 変えますか?」
沈黙の中の声
あぁ・・・・・こんな言葉しか浮かばない俺
「ん?俺は・・・なにか 変える?」
女は 聞こえてるのか 聞こえてないんだか返事もしない
「悪いな いいよ、大丈夫だ トシも腹減っただろ?一緒に食おうか」
「ありがとうございます」
思い切り 笑顔で返事した俺を 女は 鼻で笑いやがった
(ぜってぇ コイツ おぼえてろ!)



遅くまでやってる鮨屋
美味いんだ ここ
高くて あんまり俺 来れないんだけど
今日は 奢りだからなぁ
カウンターに 2人は並んで座り 少し離れて 俺も座る
しばらくして 気付いた
(あんまり 食ってないな)
それも 高そうじゃないネタばっか
俺なんか 遠慮すると 怒られるから すっげ食ってるんだけど
「腹・・・・減ってたんじゃないのか?」
「食べてます 大丈夫です」
時折 聞こえてくる会話
そうだよな 俺でさえ気付いてんだから 気付くよな
カードで支払いを済ませ 車に戻る
「ありがとうございました」
女は 頭を下げて
「これ」
と 金を差し出す
「ん?」
「私の分・・・足りなかったら言ってください」
「いいって」
「いえ、来る時に言ったじゃないですか ちゃんと払うって」
そういえば 言ってたな
だから食わなかったのか・・・・
「いいよ 連れてきたのは 俺なんだから」
「ダメです 貰ってください」
押しつけるように 差し出す

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