年上の彼 1
あたしは、バカにされてる。
無理もないか…。
ただでさえ、子供っぽいんだから。
いくらでも、好きな人なんて作れる。
まだ若いんだし。
よし、あきらめよう。
うん、あきらめよう!
「結衣ちゃん、明日ヒマ?」
何度もあきらめようと思うのに、
彼――孝輔の顔を見ると、その決意はどこへやら。
結衣の顔はパアッと明るくなる。
「ヒマ、ヒマです。ずーっと一日ヒマです」
はっ、またやってしまった。
「あはは、じゃあ後でメールするね」
孝輔は、さわやかな笑顔で去っていった。
あきらめるつもりだったのに、
よりによって、なに、約束してるんだ、あたし。
孝輔は、結衣より二つ年上。
関係は、サッカー部のエースとそのマネージャ。
幼い頃から、サッカーを続けていたという孝輔だが、
引退試合が刻々迫っていた
サッカーを辞めるのか、続けるのか。
その後の進路は、まだ決まってないようだった。
廊下に、しばらくつ立っていた結衣は、
自分の席に座り、ため息をついた。
孝輔がサッカーを続けたいのは分かっていた。
毎日早朝から日暮れまで、その一生懸命の姿は横で見てきた自分が一番よく分かっていた。
結衣は孝輔に、このままサッカーの道に進んで欲しかった。
孝輔の活き活きとしたボールを追う姿は特別にかっこよく、
その姿を見るために結衣はサッカー部のマネージャーとなり、孝輔と付き合うことにもなったのだ。
『ガンバレ!!孝輔!!日本代表も夢じゃない!!』
そう結衣は言いたかった・・・応援したかった・・・
それなのに孝輔はそのことについて決して結衣には相談してはこなかった。
(あたしは、バカにされてる?・・・子供だと思われている?・・・)
孝輔の将来を悩む姿を見る度に、結衣は劣等感に苛まれた。