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教卓の向こう
恋愛リレー小説 - 青春

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教卓の向こう 1

「おはようございます」
「おはよう」
みんな先生の姿を見つけては、囲んでいく……私はその中の一人。手を伸ばせば届く所にいる。でも、届かないこの気持ち……このもどかしい気持ちを私はどうすればいいんだろう?誰かに消せ!と言われても消すことなんてできるのだろうか?

「美術室の鍵を借りたいんですけど」
スケッチブックを片手に持った千尋は放課後、職員室にやってきた。美術部の部員である千尋だが、やる気のない部員が集まった美術部はいつの間にか自由に絵を描きたい時に描きたいだけ人が活動する部活になっていた。
そんな名ばかりの部活に入った千尋は昔から不器用で家庭科や図工の成績が悪く、家で手伝いをすればとんでもないことになっていた。 
もちろん美術も成績が悪く、お世辞でも絵が上手とは言えなかった。そんな千尋が美術部に入ったわけは単純であった。
「えっ、美術の鍵ないんですか?」
教頭が申し訳なさそうな顔で帰ってきた。放課後に美術室を使うのは千尋ぐらいなものだ。
「他の部員の子じゃないかしら」
「それはありえないと思います」
千尋は、その言葉を慌てて飲み込むとお礼を言い、職員室を後にした。
(今の美術部の状況が教頭にバレたら即刻廃部だよ)

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