〜再会〜 65
ずっと、素直にるのが怖かった。
薊に拒絶されたら、と考えると怖くて何も出来なかった。
でも、逃げなかったのはきっと、逃げそうになると必ず現れる"最低最悪な奴"のおかげ…かな。
恋歌は緩んだ表情のまま、その真直ぐな瞳に薊を映した。
変に整った、綺麗な顔をした少年。
「最低最悪だけど、好き」
小さく吐き出すと、美しい顔を歪ませ、頬を少し赤く染めた薊が恥ずかしそうに目を逸らした。
「…………」
「ねー、聞いてる?」
返事をしない薊に恋歌は首を傾げて相手の顔を覗きこむ。
「‥あー…うん、わかったから。」
追ってくる恋歌の視線から出来るだけはずれようと、今度は体ごと横に向けてごほん、と咳払いする薊。
そんな急につれない薊の態度に恋歌はあからさまにむっとした表情になる。
「なによー!人がせっかく素直になってんのに!」
そしてふと、恋歌はいつもより赤くなっている彼の耳に気づく。
こちらからその表情は見えないが今季節は秋。
明らかに普段より赤くなっているそれは、寒さのせいだけでは決してないはずだ。
「………………
ねえ、もしかして薊、照れてるの?」
ポツリと小さく問いかけた恋歌の言葉に大きな背中は図星とばかりにびくん、と反応し勢い良く振り返った。
言うまでもなくその顔は真っ赤に染まっていて。
「ば…っ!
誰がだよ!そんなわけねえだろブスっ!
おまえの顔が見たくねえだけだ!!
こっちみんじゃねえ!」
「なっ…?!」
これこそまさに売り言葉に買い言葉というやつで。
ちょっとからかってみようくらいにしか思っていなかった恋歌も、そんなことを言われては黙っていられない。
「ブスってなんなのよブスって!
そのブスがずっと好きだったって言ったのはどこのどいつよ!!」
「はっ?
なんの話だよ!
そんな物好きな奴いんのか?」
「私の目の前にいるじゃない。そんな物好きが!!」
「え?どこにいるんだよ?見当たらねーな。」