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片思い
恋愛リレー小説 - 初恋

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片思い 10

 


 終業式も終わり残すはHRのみ。明日から夏休みと言うこともあり何処か落ち着かない空気が教室中に漂っている。
 どうせ勉強漬けで過ごすのに気楽なモノだな、とは思いながらも僕自身少し浮つきながら周りの様子を眺めていた。

「……次、真壁」
「はい」
 教卓へと進み勿体つける担任教師から通知表を受け取り席に戻る。
 最低限の確認をすると、一喜一憂し思い思いに楽しむ周囲に僅かな疎外感を覚えつつも帰り支度を始る僕。
 
 その後も返却は滞り無く進み、最後に尤もらしい定型文を残して担任が教室を出て行った。


「光輝、これから何処行く?」
 自由になるや当然の様に僕の下にやって来る御崎。
「……何処も何もこれから家に帰って寝るつもりだ」
「まあそう言うなよ。俺とお前の仲だろ」
 相変わらずの気持ち悪い言い回しに苦笑で応える僕。
 生憎今日は城山が生徒会の仕事で遅くなるらしくこれと言った予定も無い。
「少しで良いから、な。どうせ暇だろ?」
「……仕方無いな。良いよ、少しだけなら」
「よし、決まり。それじゃあ取り敢えず――」


「……今何時だ?」
「ん、5時少し前ってとこだな」
 あれからゲーセン、カラオケ、ビリヤード――結局の所「少し」で解放される筈も無く今に至る。
「お前の言う少しは僕のとはかなり違うらしいな」
 溜息混じりに言い捨て100円バーガーをかじる。
「まあそう言うなよ。何だかんだで結構楽しんでるだろ?」
「ああ、御蔭で財布が大分軽くなった」
「だからこうして奢ってるじゃないか」
「そうだな。感謝してるよ――代わりに五千円貸したけど」
「いやあ、今月ピンチだったから助かったぜ。これで何とか乗り切れそうだ」
 と言う事は、今日使った分で足りた訳だ。取り敢えず殴って良いだろうか?

「――そう言えば、今日は香奈ちゃんと付き合い始めて13日目の記念日だな」
 睨む僕をはぐらかす様に話を変える。それも余り触れて欲しくない話題に。
「……そんなキリの悪い不吉な記念日は無い」
「それもそうだな……で、どうよ調子は?」
「……どうなのかな。正直良く分からない」
「分からないだと?」
 そう言う御崎の顔に少し険が含まれる。
「毎日の様に一緒に帰っているし、城山さんはたまに僕の家にも来る。この前はデートもした。ただ――」
「ただ、何だ?」
「――僕は何一つ彼女にして欲しい事が無いんだ」
 そう、城山は僕を好きだと言った。名前で呼んで欲しいとも言った。手を繋ぎたいとも……。
「きっと彼女には沢山して欲しい事がある筈なのに……」
「お前は良いのか、それで?」
「良くはないと思う。だけど……」

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