パニックスクール 14
険悪な雰囲気になる2人を落ち着かせようと洋平は声をかけるが……
「あなたは黙ってて」
「魚崎君は黙ってください」
と2人の剣幕に押され、はいとしか答える事しか出来なかった。睨み合いながらも2人が言い合いを続ける。
「ったく、どうなってんだろうな」
保健室の天井を仰ぎ見て、現実逃避する。2人の口喧嘩をBGMに洋平は溜息を吐きながら気の済むようにさせておこうと考えを放棄した。
「ったく……」
保健室から戻りながら、洋平はぶつぶつと文句を言う。
「あの…魚崎君……」
「え?」
振り返るとそこには斉藤 絵美が立っていた。
「斉藤?」
「あの…さっきはごめんなさい…」
「いや、良いんだ。気にしてないし。」
「ううん…そうじゃないの。」
「ん?どういう事だ?」
返ってきた答えは驚くべきものだった。
「…出来たら…気にして欲しいの……」
「は?」
「私の気持ち……」
普通ならば読めるだろうが、洋平の頭の上には〔?〕ばかりが立つ。
「悪りぃな。ちょっと分らん。」
(そんな……何で?)
彼女は最後の勇気を振り絞り洋平の前に立ち
「私が洋平君に気にして欲しいのは……私の気持ちなの。」
と言う。
「う〜ん…つまり…」
「だから…私は洋平君が……」
『好きなの』と言おうとした時である。洋平の背後に人影が見えた。野々宮 光恵である。
「魚崎君」
「おっ、野々宮か。今から帰り?」
絵美の会話に割り込むように話しかけてくる光恵。
絵美にしてはせっかく勇気を振り絞って告白しようとした所を邪魔をされた形である故にムッとする。
事実、光恵はそうなる事が分かっていて介入してきたのだ。
「さっきはごめんなさいね。みっともない所を見せて」
「別にいいよ。もう気にしてねぇからよ」
「そう……。だったらさ、この後暇?」