歪んだ愛情 13
俺はデスクの椅子からベッドに移動した。
代わりにミサキがちょこんと椅子の上に座る。
「お兄ちゃんは、私たちの中で誰が好き?」
ミサキが尋ねる。
ユニットの中で誰が、ということだろう。
「そんなの簡単には選べないな」
「やっぱり?」
「ミサキにはミサキの良さがあるし、ほかの子にも同じ、違った良さがある」
俺の言葉に、ミサキはクスッと笑った。
「お兄ちゃんは優しいね」
「それが普通じゃないのか?」
「みんなお兄ちゃんみたいな人だったらいいけど、現実はそういうわけにもいかなくてね」
俺が当人ではないからその世界なんて当然知らないけど、アイドルというのは常に人気取りに奔走しててユニット内でも格差がある、ということなのだろうか。
「私は、ヒカルには勝てないんだ」
ぽつりと、ミサキがそうこぼした。
「どういうことだ?」
「そのままだよ」
ミサキが全然ダメな、人気がないはずがない。
ダンスに代表されるように身体能力は妹より高いと思う。
スタイルだって妹に比べると数値は低いかもしれないが、公式サイトのビキニの写真はかなりのものに見えた。正直、その写真をオカズにだってした。
「ヒカル、すごい人気なんだよ。グループの中じゃ1番。本人は全然意識してないみたいだけど、私は羨ましく思えて…」
「それ以上言うな。俺にとってはミサキもすごいと思うぞ」
「お兄ちゃんは、いっつも誰にでも優しいね」
「ミサキが頑張ってるのは、俺も見てるから」
「ありがと」
ミサキが俺を見て、さらに言う。
「もっと頑張れるように……お兄ちゃん、私と…………えっち、して」
「……本気で言ってるのか?」
「うん」
思いがけない一言に、俺は驚きミサキに尋ねた。
すぐにコクンと頷いた。
「お兄ちゃんが大好き。大好きな人に、初めては、捧げたいの」
「ミサキ…」
しっかり俺の目を見て言い放つ。
決意は固いようだ。