インセスト・ライフ・イン・無人島 9
光一達が怪しまれるのを避けるため、木の実を取ろうとして腰が抜けた綾子を発見し、おんぶして帰宅した…というストーリーを考え、皆で寝泊まりしている居住区…と言っても軽く器を組み合わせ椰子の葉っぱを重ねた小屋とも呼べない住処に帰宅した後に、光一は美幸にとんでもないものを見せられた。
さっき何とか倒したはずの植物…古典的な花の中に口のような構造が作られ牙の生えたそれを美幸が倒したと言い張り、さらには解体している真っ最中だったのだからたまったものではない。
「ち、ちょっと!それを食べるのか美幸?そいつはさっき母さんを襲ってきたんだぞ?何とか追い払ったけどさ?」
「へ!本当に?なら私すごいね、お兄ちゃんもしとめられなかったモンスターをやっつけちゃったんだからさ!」
メンバーの中では物足りないレベルながらも、大きな胸をぷるんと揺らしえっへんと胸を反らす美幸をよそに、光一は美幸が捕まえた化け物植物をまじまじと眺めた。
アレを見られなかっただけまだマシかもしれないが、それにしてもこんな生物は見たことがない…本当にこの島は大丈夫なんだろうか?何か秘密があるんじゃないんだろうか?そう考えているうちに、美幸は胸を押し当てて抱きついてくる。
「も〜、お兄ちゃんったらあ、もっと褒めてよぉ!それにお母さんばっかりずる〜い!私も抱っこしてよぉ!」
「あらあら、美幸は甘えん坊さんなのね?いいわよ?ほら、お兄ちゃんにおんぶしてもらいなさい?」
天然小悪魔というのに相応しい態度で抱きつく美幸を見て、綾子は微笑み光一から離れるものの、顔を赤くしてどこか寂しそうに二人を見つめた。
「姉さんも血は争えないわね〜♪さて、これっておいしいのかしら?」
「も、もう、優奈ったら…でもこれ、美味しいのかしら?」
甘える美幸をよそに会話していた優奈と綾子だったが、美幸が無造作に種火近くの石の上で焼いていた人食い植物の皮を剥かれた真っ白な肉片を見て、顔を見合わせた。
綾子はやはり先ほどの事があるからかどこか遠巻きに眺めているが、優奈は逆に興味深々だ。
「や、止めた方がいいんじゃないかしら、優奈…それにもしこれが人食い植物か何かだったとしたら…」
「大丈夫大丈夫、あれだけ実も美味しかったんだから…それに、この島無人島でしょ?あーんっ♪」
楽観的に呟く優奈だが、全く考えなしという訳ではない、そもそもあの植物がそんなに強い毒を持っているならとっくの昔に綾子も死んでいるはずだし、人食い植物なら私たちも襲われているはずだ、なら…とりあえずまず味覚からでも正体を知りたい…そう考え、優奈はもしゃもしゃと人食い花を咀嚼していく。
もしゃもしゃもしゃと元人食い花のようなものを咀嚼する音が響き、たまりかねて光一は声をかけた。
「叔母さん…大丈夫?水、用意する?」
「…カニだわ」
「へ?」
「越前ガニの味がする…しかもこれは焼きガニね…この味、久々だわ」
きょとんとした表情で、怪植物の味にうっとりする優奈に光一は驚きながらも、自らも目をつぶり、適当な肉片を口に放り込んだ。
口の中にはジューシーな味わいが広がり、次第にそれは口いっぱいに広がる匂いと化していく…これはまさしく…。
次第に光一はもう一口…と考えて肉片に手を伸ばすが、疑問を感じて綾子にそれを手渡した。
「ねえ母さん…これ、食べてみてよ?」
「へ?いいけど…そんなに美味しいなら…んんっ…すごいわ光ちゃん、これ大トロの…しかもお醤油の味までするわぁ…」
やっぱりおかしい、この植物、何かあるんじゃないのか…肉片の部位か、食べる人によって味まで変わるなんて。
「ねえ母さん、叔母さん、やっぱりやめようよ、この肉片あんまり食べたら…」
「きゃあああ!な、何でコイツがぁっ!」
光一が二人に提案しようとした矢先に悲鳴が上がる、声の主は美咲だ、横には気まずそうな麻衣がスーツケースを手に佇んでいた。
間違いなく人食い花に襲われたのだろう、ビキニは引き裂かれたのか、なんとか紐を結びなおした後が見える。
「大丈夫?姉さん、まさか姉さんも母さんみたいに〜っっ!い、痛いなもうっ!」
「ば、馬鹿!危なかったけど直前で切り抜けたわよ!麻衣だって助けたし!」
光一は思い切り顔を殴られた、麻衣は頬を赤く染めて興奮している…つまりはある程度この植物の脅威を味わったと言うことだろう。