幼妻のアブない日常 258
初めて行く彼の家…
ご両親は旅行中で、弟さん独りいるだけだった…
「お留守番中に悪かったんじゃない?…」
「そんなこと構わないさ…夕べもダチが泊まりに来たし…」
「でもお友だちって男子でしょ?…私は一応女だし…」
「女の子が遊びに来たなんて聞いたら、家の両親はそれこそ喜ぶよ…」
部屋に案内され、ベッドに座る。
彼に助けられて、安心しきって、このまま眠ってしまってもいい気持ちになりそうだった。
「今日は…ホントに、ありがとうございます…」
「いや…俺がいなかったら大変だったよな…」
「私、スイミングクラブ辞めるかもしれません…でも、慎一郎さんとは離れたくないんです…」
「そうだな…あんなコーチがいるなら俺も考えちゃうよな…」
「ダメですよ…慎一郎さんは水泳やめるなんて言わないでください…」
「だけどよ、結衣子をあんな目に合わせた男が俺のコーチだぜ…そんな奴の言うことなんて聞けねぇーって…」
慎一郎さんはクラブでも一番の速さを誇るスイマー。
そんな彼がクラブを去ったら大打撃は必至だろう。
でも、その言葉にはすごく理解できるんだ。
「…だったら、後は慎一郎さんに任せます」
私はそう言うだけにとどめた。
「俺にとっては、結衣子の方が大事だ」
慎一郎さんは私を強く抱きしめた。
それは私にとっては凄く嬉しい、待ちに待った言葉だ…
「慎一郎…さん…」
込み上げてくるものに声が掠れる…
「ごめんな…結衣子がもう少し大人になってからって思っていたんだけど、あんな奴に先を越されるぐらいなら…」
慎一郎さんはそこまで言うとグッと唇を合わせてきた…