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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 51

なのでカターリナが相当前から無人だという事に気づかないのも無理はなかった。あまりにも状況が悪すぎた。
しかし悪い事ばかりではない。突然カターリナをかっさらった機体に驚いたドリザルは撤退を始めてくれた。
どの機体も解析用の残骸を手にしており、攻撃するのは簡単に見えた。
だが、誰も追撃はしなかった…。もはや目的の分からない混戦に陥ってしまっていてどの所属の機体が敵なのか判断出来なかったし、追撃できる余力も無かった。
こうしてドゥティの「この世界での」初陣はよく分からないままに終わった。
元々はガチホモ臭い脳筋で精神的に童貞(実生活はリア充)なドゥティが、侵略軍の戦力を見せつける為だけに先走った作戦。
そもそも彼自身、訳が解らないも何も、何も考えていない。
それを卯月が国家の戦略レベルまでに引き上げた。

シェルター内での臨時国会、および各国首脳の間では、ゼイルの洗脳を受けた議員による裏工作が行われていた。

ゼイル派に不利益な国防関係者を失脚か暗殺、ないし誘拐して洗脳。
そして地球側で圧倒的に不利かつ非合理的な人型兵器の主力化をゴリ押し。
特に後者は四日後の全面攻撃で『ロボは強いロボがあれば勝てる』というアニメじみた妄想を地球人類に植え付ける事となる。

ドゥティの困惑なぞ構う事もなく、地球と異世界その他を交えた全面衝突まで、あと四日。

カウントダウンは止まらない。

そこへそんなもん知ったこっちゃない奴ら、ダイダイオと捕虜三名(VIP一名に護衛二名)を乗せたシャトルの帰還が通達された。

『ちょ?ちょっと待ってくれたまえ服着るから!』
『はわわ?ぱぱぱパンツ!換えのパンツどこですかぁ?』

しばしの間、そして二人分の咳払い。

『副長ダイダイオ・レン・ジクン!機上より失礼!捕虜三名を手土産に帰還した!』
『アエラティ王国レガート貴族、ミトン・ラ・レガート他二名、我ら虜囚の身なれど凡俗に非ず、将校としての待遇を要求する!』

騎士と姫の凱旋であった。

ドゥティの予想外、まさかガチでリアル童貞の部下が嫁さん(?)を捕まえて来るとは想わなんだ。

「あー…まぁいい、話は飯でも食いながら…な。」

大型ステルス輸送機内の一室で一同は卓を囲んでいた。
いつぞやの約束通りレーション赤飯なのはご愛敬。
ただし時間的な余裕のある状況、缶詰・レトルト・インスタント、の軍用糧食なりに再調理が施され、簡素なプレートに盛られていた。

「実際のところ残念と言っていいのかわからんが、君らを連れ帰る訳にはいかんのだよ。」

ドゥティはそうのたまい、赤飯をもりもりかっこむ。
今回の作戦で無用な捕虜をとって事態を荒立てぬ様にと厳命されている。

「団長、まさか、その。」
「早とちりするなダイダイオ、それとこぼすな。」

わなわな震える唇から福神漬けをポロポロこぼすダイダイオをドオティがたしなめる。
そしてドゥティは手近な当番兵を捕まえるなり、赤飯のおかわりを頼んだ。

『あ、それ、私もってきますぅ。』
『ハハハ…ダイダイオ殿の様子が気になるのですか、どうぞ。』

廊下でそんなやり取りの後、鼻歌まじりにピンク髪のメガネっ子が、ツインテールをワサワサゆらしながら現れた。

「失礼しますぅ。」
「うむ、寄越せ。」

通常の入室要領ならバカでかい声で軍隊式の挨拶・口上をカマす所だが、会食の妨げにならぬ様、ささやかな一礼と共にプラスチックの大碗で赤飯が出された。
おそらく缶飯ふたつ分は盛られている。

「渡りをつけて解放、というのが現実的、であろうな。」
「寛大なご配慮に感謝します。」

と、ミトンは焼鮭を切り分け、ダイダイオに『ハイあーん』していた。
レトルト物をパックから出して軽く焼き直したのだろう、ダイダイオの舌に心地よい塩気が広がる。




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