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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 5

ゼイル・卯月・味木というこの三悪の不思議な共通点、根本的な部分で何一つ他者を愛していないのだ。
まずナルシスト独裁者ゼイル、ドラマチック卑劣漢たる味木は言わずもがな。
そしてゼイルに心酔した卯月もまた破滅的な幻想に浸っているだけである。

この三竦みの愚かな三賢者に愛を理解させることなど神ですら不可能だろう。
ならば神よ、痛みだけでも教えてやれ…。


ーとある海岸ー

ゼイル来訪と同日同夜、彼を追って数刻遅れで神の代行者は光臨した。
巨悪に鉄槌を下すべく、この地上に光臨した神の代行者。
神の代行者を目の前にした一人の少女は、第一声こう呟いた。

「…あ…おちんちん…?」

もう少し具体的な話をすると、とある少女がお気に入りの場所とする海岸。
小高い丘には全裸の美少年が呆然と立ち尽くしていた。

全裸の少年は股間の立派な物を隠す事もしない。
目はうつろで心ここにあらずという感じだ。
そのせいで、古代の戦士の彫刻のようにも見える。
肌は白く髪は青銅色。
それも彫刻らしい美しさを際立たせる要因になっていた。
少女の分厚い眼鏡を通して映る姿は細マッチョ、という表現に近い気もするがそれは鍛えた筋肉というよりも、自然に鍛えられ骨格と融合した筋肉。
喧嘩バカな弟と似た形状だが明らかに格上の造り…少年兵の類ではないかと想像し、弥生の身震いに併せて雑に束ねたポニーテールが揺れる。
夜空の星とバトル物の腐女子向けアニメを愛する女子高生、星見崎弥生(ほしみざきやよい)はそう評価した。

そして弥生が彼に投げかけた第一声の『おちんちん』つまり男性器。
弥生が幼い頃に風呂を共にした身内成人男性は軒並み包茎という悲しい遺伝子の持ち主ばかり。
彼女がBL物の『うすいほん』以外で亀頭の露出した男性器を見るのは初めて、しかし問題はそこじゃない。

「変態だぁーっ!!!」

弥生は耳まで真っ赤にして叫ぶなり、あるのかないのか解らない胸をかき抱いて腰を抜かし…そこへまた一人の少年が駆けつけて来た。
こちらは小柄でガッチビとした学生服姿の日本人、ただしその頭髪は右が青で左は赤、前髪が銀色という冗談みたいな配色。

「姉貴っ?どうしたっ!」

この見たまんまヤンキー少年が弥生の弟、流星(りゅうせい)であった。

「姉貴から離れろこの変態野郎〜っ!」
「…ここはどこだ…一体何が起きて…」

ようやく全裸の少年が文章として発した言葉、それは流星の拳に遮られた。
鈍い打撃音が全裸の少年の左頬で小気味よく響き、流星は勝利の確信を抱く。
そして弥生の先程まで紅潮していた顔が突然の暴力に青ざめる。

弥生は別に全裸少年の身を案じた訳ではなかった。
流星が過去、つまらない喧嘩や過剰防衛で警察の世話になった事は数しれず。
しかも彼の拳は倍近いウエイト差の相手を一撃でダウン…させる筈であった。
確かに全裸の少年は一度は膝を突いたが、すぐに立ち直る。

「むぅ…ごあいさつだな…蛮族の戦士。」
「うるせえ裸族!人並みに服着て話…。」

全裸の少年が殴り返し、今度は流星が拳で言葉を遮られて膝を突いた。
パンチ力と同じく超高校生級のタフネスを持つ流星、そんな弟が立てない。
しかも格闘技や喧嘩と無縁の弥生が見ても解る程、明らかに手加減した一撃で流星は膝を笑わせていた。

「うぐ、ああ、やるじゃ、ねぇか。」
「君の言う通りだな、服を着よう。」

どんな手品か全裸の少年の手かざしひとつ、その身を黒衣が包み込んだ。

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