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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 30

頭部を掴まれたカターリナが壊れたからくり人形の様に手足をじたばたさせる。
「ムググ、くるちい…!」
ダイダイオの悲鳴がコックピット内でこだまする。
カターリナの頭にクローが食い込み、カバーが砕ける。全体が少しずつ瓢箪型に歪み始めた。
「あーっこわれちゃう」
ボウン
ついに頭部は煙を発する。センサーカメラの発光はもはや無い。
メインカメラやセンサーの集中した部位を壊された事により機体全体に異常が生じた。
投影される画像の補正が出来なくなり、ロックオン可能な距離も短くなる。
白兵や回避においても不具合を伴ってしまう状況。

「らめぇえええ?」

…などと奇声を発するダイダイオに通信が入った。
ノイズだらけのモニターに映るのは作業着姿の精悍な少年。
ダイダイオは機体を通して伝わる気配から、彼も異世界人である事を察する。

「異世界中央政府帝都執行官!アイン・シュタイン!」
「ほほう?地球の奴隷労働者階級に化けてまで我々を追って来たのかね?おまわりさん?」

聞く耳持たずアインは作業機の右腕に装着したパイルバンカーをカターリナのコックピットにあてがう。

「カターリナのパイロット、貴様には見覚えがある、ゼイル派のテロリストだな?」
「口を慎みたまえ少年?すでに機能していない中央政府の役人風情が!」

このダイダイオ狂人であれど手練れ、左手で逆手抜刀した超合金サーベルが閃く。

対して作業機G7号はどれだけ強化してあっても、機体性能はアハト(コア)のサポートとアイン自身の技量で補っている。
杭打ち作業アームを改造した右腕の気圧系が切り裂かれ、パイルバンカーが使用不能となる。
次いでカターリナのサーベルが左手首を狙い、アインは回避すべくその手を放した。
カターリナに間合いを取られてしまったが仕方ない。

「アハト!ハンマーアーム!」

アインが破損した右腕を迷わずパージするなり、普段饒舌なアハトは『レディ』と簡潔な返答。
異次元から転送されたハンマーアーム、スラッガー(解体クレーン)を改造した鋼球付きの右腕が装着された。
アインは機体全身のフルスイングとタイミングを合わせワイヤー延長、つまりスパロボ的なブンブン振り回す一撃をカターリナに見舞う。

「ブーストハンマーか!」
ダイダイオはそう叫んでいた。カターリナを右に滑らせるようにしてどうにか大質量の塊を回避。
だが、引き戻される攻撃を完全に避け切る事は出来なかった。かすめた左肩の装甲がそぎ落とされた。
衝撃に姿勢を崩しながらもバトルライフルを構える事は忘れていない。殆ど意識朦朧になりながらも操縦かんを操作。
アインは反撃を予測して咄嗟に打撃部を機体の前にやる。簡易的なシールドだ。
しかしダイダイオはそこで自分が心底間抜けた事に気付く。
咄嗟の白兵と射撃の切り替え、実戦で己にメモリーされた動作。
脊髄反射レベルでカターリナに射撃姿勢を取らせたまではいい。
しかし40mmバトルライフルも30mmハンドガンも先の戦闘で紛失。

「あ…?」

銃と名の付く装備を失っていたカターリナの動作は、さながら幼児の鉄砲ゴッコであった。
ダイダイオが正気と本気を出せていれば頭部バルカンの目視照準で、アイン機の関節部を撃ち抜いて突進を止める事も出来た筈。

「うおおっ!」
「ぷぎゅっ?」

気付いた時には瓢箪型に歪んだ頭部が煎餅の様に潰されていた。
過去の戦場から引きずる情緒不安定、それがダイダイオ最大の弱点であった。

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