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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 14

見学会場の見回りをしていた若手の陸士達が僅かな異変に気付いた様子もない。

その人物は受付で警衛勤務の隊員にビジター用の名札と適当な会釈を返し、何事もなかったかのように分屯地を後にする。

そして、消えた。

ー大蛇院家・ゼイルの私室ー

ひょんな事から富豪の娘を誑かした(というか勝手になつかれた)異世界の侵略者ゼイル・ラ・バイル。
彼はそれこそワイングラス片手に優雅なスーパーニート生活を送っていた。
大蛇院家のメイドを(実質愛人として)脇に従え、卓の対面には暑苦しい大男がソファを軋ませている。

「ゼイル閣下ッ!全てはこのドゥティ・デ・ミコゥンにお任せをッ!」
「頼りにさせて貰うぞ我が忠勇の騎士よ、それと顔が近い。」

このドゥティという暑苦しい男もまた次元跳躍で地球に訪れた、ゼイルの同志である。

ねじり鉢巻きと六尺褌が似合うこの男は騎士というよりはガチムチ漁師の様だ。
誰が彼を騎士だと思うのだろうか。多分本人も騎士の自覚が無いに違いない。

彼の熱意のある進言により、作戦は驚くほどにすぐに決まった。
というか余りにも暑苦しく雄臭いので適当に決めた、というのに近かった。
ある意味熱意が伝わった、という感じである。
そんな行き当たりばったりなところが味木をのさばらせる要因だった。
これが初の地球サイドとの戦闘になると思われるのにこんな調子で良いのだろうか、誰も危機感を抱いていないのが恐ろしい。うんこかよ。

何となく白兵戦で無双しそうだが、簡単な落とし穴にはまって捕虜になりそうなドゥティ。
この男は地球総攻撃に先行して、装機歩兵サウスランド五機を小手調べに投入する計画を進言していた。

とりあえず習志野周辺の市街地域、つまりあえて自衛隊ロボット部隊のご近所で暴れて喧嘩を売ってみる、という作戦内容。
普通に全面攻撃を仕掛ければいいのに、要は早く戦いたくて仕方ない流石は童貞。
その作戦とも呼べないゴロツキまがいのテロ行為を二つ返事で、ワイングラス片手にオーケーしてしまうゼイル様ってばキャー素敵(棒読)。

「こいつらは戦争する気があるのか」
味木は呆れた。元々ゼイルの戦術に期待なんてしてはいなかった、しかしこれは余りに低レベルすぎる。
殆ど単独で自衛隊に突っ込んで勝てるとは思えない。
ドゥティ1人が死ぬのは大した問題じゃない。
機体に使われている技術が敵に渡ったらどうするのか。

大体、こんな藪蛇な事をすれば地球侵略計画は露呈しかねない。いや、確実に発覚するだろう。いくら秘密裏にやっているとはいえ隠し通すのも限度がある。
撤退時に追跡される事もありえた。
能力差は圧倒的にこちらが上、発覚した時点で一斉攻撃に転じれば適当にやっていてもどうにかなる。
だが、この支配者にそれが出来るだろうか?

それだけではない、AAAグループすらも危うい。
裏切りレジスタンスに兵器を売り込むというシナリオが進む前に味木の工場の存在が発覚してしまえばもう退路が無い。
ゼイルからも地球からも狙われる事態になりかねない。
味木はドゥティという男のせいで追い詰められつつあった。

しかし、ドゥティが居なくても勝手に追い詰められたであろう。
味木は技術の流出を恐れているが、オリハールが完璧にコピーされている事に未だに気が付いていない。
他人の心配をする前に自分の心配をしたら、どころではない。
壊れたプランが更に誰かに壊された、という所まで話が進んでいる。

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