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A/A アンジェル/アロー
官能リレー小説 - SF

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A/A アンジェル/アロー 2

アスカが操作しようとすると操作盤に触れるたびに警告音が鳴り、パネルにはエラーの表示が増えていく。
訓練で艦のコントロールを奪われた想定など何度も繰り返してきた。
しかしこんな状況は無かった。
無かったというよりありえなかった。
「オールエラー!艦のコントロール暴走!解除は艦の全システムを強制ダウン。このままだと動力炉、生命維持装置にも影響が出ます!」
アスカはパニックに陥りそうになるのを堪えるも報告する声が悲鳴のように裏返っていた。
システムの強制ダウンは再起動に時間がかかり、その間、無防備になる。護衛艦も無い状況では自殺行為にも等しかった。
「戦闘機と揚陸艇の発進は?」
隊長の質問に隊員が格納庫に確認の連絡を入れようとするが、通信機は耳障りな高音ノイズを上げる。
艦橋から走って確認に行こうとするがハッチが開かなかった。
「動力炉が異常回転を始めました。レッドゾーンまで2分」
「緊急事態を宣言。アスカ、システムを強制ダウン。アスカの判断で最善の再起動を」
「了解!再起動します!」
アスカは席を立つと操作版の下にもぐりこみ、整備用扉を開くと自分の首にかけられた鍵を基盤につけられた鍵穴に挿し込み解除すると数枚の基盤を強引に引き出した。
艦内にアナウンスの無い警戒警報が響き渡る。
ややして、艦内は非常灯以外の明りは全て消え、人口重力が無くなったがすぐに弱い重力が乗組員の身体を押さえた。
「緊急時用システム起動。生命維持装置、異常なく稼動。メインコントロールの復帰を急ぎます」
「全乗組員に通達。警戒を厳にせよ。ドッキングベイは特に注意せよ」
「…通信機、反応しません」
オペレーターが上ずった声で返事をする。
「不具合を確認して報告せよ」
隊長は考え込んだ。一番ありえるのは密輸船との接続で何かウィルスを送り込まれたか。
もしくは救助したのは被害者ではなく密輸団の人間で医務室を制圧して何かしているのか。
隊長は護身具の確認をして部下を数人選ぶと艦橋での復旧を指示して医務室へと向かった。
全ての自動ドアはスイッチに反応しないので人力で解放して行く。
幸いなことに物理的に閉鎖された部屋はなかった。
「隊長…」
「静かに。何か変よ」
医務室の前には数人の男たちが倒れていた。この船の乗組員は全員女性なので明らかに違う。
密輸団の男達だろうか。
全員が裸で意識がない。外傷は見当たらないが、白目を剥いて泡を吹き出し時折痙攣していた。
そしてその奥の部屋に人影があった。
隊長はその姿を見て一瞬躊躇して立ち止まったが、意を決して突入した。
そこには異様な光景が広がっていた。
部屋の中はまるで嵐が吹き荒れた後のような惨状だった。
壁は切り裂かれ床は陥没しており、棚はなぎ倒されていた。死体が無いのが不思議なくらいの有様だ。
だがそんなことはどうでもよかった。
目の前にあるのは見たこともない巨大な機械だった。滅茶苦茶に荒れた部屋の真ん中にポツンと鎮座し、鈍い光を放っていた。
「何…これ?」
隊長は思わず呟いた。
形状は人間の女体に似ていた。
ただし、手足はなく胴体だけで頭部らしきものもない。表面は金属ともプラスチックともつかない青色の素材で覆われており、所々に継ぎ目が見える。
これが何なのか、なぜ部屋がこんな状態になっているのか誰も見当もつかなかった。
「それよりも倒れている人達を運び出さなくては…」
外傷が無いとはいえ、このまま放っておくわけにはいかない。
しかし、彼等は密輸団の一味かもしれないのだ。
下手に動かすと危険かもしれない。
隊長は迷ったが、彼等は素っ裸だし手錠をすれば大丈夫だろうと判断。1人ずつ慎重に抱え起こし、手錠をはめていく。
この手錠は特殊な合金製で、どんな力自慢でも壊せない代物だ。
だが、巨大な機械の女体が起動した時彼女は自分の選択ミスを悟った。
目を覚ました男達の様子がおかしい。皆虚ろな表情をしている。
「あなたたち、しっかりしなさい!自分が誰だか分かる!」
隊長が大声を出すと、男達は答えた。

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