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炎と蛮人
官能リレー小説 - ファンタジー系

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炎と蛮人 1

それはまだ、人類が文字というものを発明する前の時代。
赤々と燃える炎は神の啓示であり、天と地を繋ぐ唯一の道だった。
そしてその火の明かりで闇を切り取り、世界の姿を暴き出すのも神の御業だと考えられていた。
だから人々は火の前で祈りを捧げた。
自らの信仰心を証明するために。あるいは、己の存在を主張する為に。
それは今よりもずっと原始的で、原始的な分だけ純粋な行為であった。
一人の青年が豪火の中で踊るようにのたうち回っていた。
彼が身に着けているのは、薄い布一枚だけだ。しかしそれが逆に彼の肉体美を強調しているかのようだった。
汗だくになりながら彼は踊り続ける。炎に照らされた肌からは湯気が立ち上っている。
その様はとても神秘的だったが、同時にひどく淫靡でもあった。
「おお…」
その様子を眺めていた男達が感嘆の声を上げる。
青年の名はアーヴェという。彼はこの村の生贄に選ばれたのだ。
村では時折こうして少年や青年の中から一人を選び、神への供物として差し出すことがある。
そうすることで村は平和を保ち続けてきたのだが…。
「うっ…ぐぅ」
やがてアーヴェの動きが鈍くなり始めた。全身から滝のように汗を流しながらも動きを止めないその姿には鬼気迫るものがある。だがそれも限界に達したのか、彼は遂に倒れてしまった。
それと同時に、彼の身体から白い煙のようなものが立ち上り始める。
煙は瞬く間に広がり、そして消えていった。
それと同時に周囲の様子が一変し──村は一瞬にして無人になった。
***
(あれ?ここはどこだ…?確か俺は儀式をしていたはずなのに…)
気が付けばアーヴェは闇の中に居た。 明かりも無ければ人の気配さえ無い寂しい世界…。アーヴェ以外誰も居ない。
何も見えない。自分がどこに居るのかさえ分からない。
(これは夢? 俺は死んだのか? それともまだ生きているのか?)
不思議な感覚だった。まるで自分が自分でないような。だが間違いなく自分は存在しているし、思考する事もできる。ただ肉体の感覚が全く無く、意識だけが闇の中に漂っているような妙な感覚だった。
自分がアーヴェである事は分かるが、それ以外の情報が全く入ってこない。

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