PiPi's World 投稿小説

刀王伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 0
 2
の最後へ

刀王伝 2


その少年、歳の頃はまだ13〜4といった所だろうか…。
容姿は…悪くない。
むしろ美少年と言って良い、整った顔立ちだ。
だが“格好良い”と言うよりは“可愛い”という形容詞の方が似合う程の女顔であり、黙っていれば美少女にしか見えない。
瞳の色は夜明け前の空を思わせる紺碧色、一方、髪の色はこのニルヴァディア大陸では珍しい漆黒色であった。

容姿ではないが彼に関する事で変わっている点がもう一つ…それは彼の刀である。
ニルヴァディア大陸で主流なのは両刃の直剣である。
もちろん刀…すなわち片刃の曲刀が存在しない訳ではない。
だが彼の刀は他のいかなる刀とも違っていた。
刀身は細長く、緩い放物線を描くような湾曲、小さな鍔、柄は長く両手持ちのようだ。
それは“刀”であった。

少年は刀を頭に向けて叫ぶ。
「…んの腐れ盗賊共ぉ!!!テメェらに名乗る名前なんざ無ぇ!!俺は今気が立ってんだ!!一人残らずぶっ殺してやるから死にてぇヤツから掛かって来やがれぇ!!!」
「ふざけやがってぇ…オイ!!野郎共ぉ!!あのクソ生意気なガキを血祭りに上げろぉ!!!」
「「「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」
女達を犯していた盗賊達は次々と肉棒を引き抜いて武器を手に取り、少年へと襲い掛かった。
その数およそ20人強…。
「フンッ…ザコ共が!」
少年は慌てる素振りも見せず、刀を持ち直して自ら盗賊達の中に身を踊らせた。
たちまち起こる、剣戟の響き…
「ぎゃあっ!!!」
「ぐあぁぁっ!!?」
「うぐおぉぉっ!!!」
「がはあぁっ!!?」
「もげぇっ!!?」
…かと思いきや、聞こえて来るのは盗賊達の悲鳴ばかり。
少年は目にも留まらぬ速さで次々と盗賊達を斬り殺していく…。

…僅か数分の出来事であった。
「ケッ!弱ぇ…弱すぎるぜテメェらぁ!!」
少年の周りには無残な屍と化した盗賊達が累々と横たわっていた。
「なっ…そ…そんな馬鹿な…!?」
頭は殺された手下達を前に半ば呆然…。
そんな頭に少年は剣先を向けて言う。
「さぁ!!次はテメェの番だぜ!?デクノボウ!!」
「ク……クソガキがぁ!!!調子に乗りやがってぇ!!!」
頭は足元の大斧を持ち上げて構えた。
対峙する二人。
「よくも子分共をぉ…小僧!!テメェだけは許さねえ!!タップリいたぶってからブッ殺してやらぁ!!!」
「おう!!そいつぁ良いや!早く掛かって来やがれ!…それとも腰が抜けて動けねえのか!?来ねえってんならこっちから行くぜぇ!?」
…だが、よく見ると少年は余裕の笑みを浮かべているのに対して、頭の表情は強張っており顔には大量の脂汗が浮かんでいる。
「フッ…」
頭は一瞬、表情を崩して笑った……と次の瞬間、彼は予想外の行動に出る。
大斧を放り出して反転するや、全力疾走で逃げ出したのだ。
「うぎゃあああぁぁぁぁぁぁ〜っ!!!!」
「な…っ!?テメ…ッ!ふざけんな!!そこは勝ち目無くても仲間の仇取りに来るとこだろうがよぉ!!」
少年は走り去る頭の背に向かって怒鳴りつけるが、頭は振り向きもしない。
だいたい盗賊なんて刹那的な生き方をしているような連中は動物的な本能が強いヤツラだ。
ましてやその頭ともなれば尚更である。
そして頭はその獣の本能で悟ったのだ。
コイツはヤバイ!ヤバすぎる!と…。

そして当然それを逃がす少年ではなかった。
「ハハッ!…清々しいまでの逃げっぷりだなぁ!だが残念だったなぁ……俺の方が早え!!」
そう言うが早いか、彼は地面を蹴って頭の後を追った。
あたかも草原を駆ける豹の如し。
その駿足…まさに神速。
たちまち頭に追い付き、追い越し、立ちはだかった。
「ひいいいぃぃぃぃぃぃっ!!!?」
頭は震え上がる。
不意を突いて引き離したつもりだったのに、まさか追い付かれるなんて…彼は少年の前に、文字通り膝を屈し、プライドも何もかも捨てて命乞いをした。
「ゆ…許してくれぇ!!!金ならやる!!!お前が望むなら子分にもなってやる!!!い…いや、ならせていただきやす!!!で…ですから命だけはぁ…っ!!!この通り!!この通りですうぅ!!!」
「……」
少年はそれを黙って見下ろしていたが、やがて言った。
「…テメェも盗賊なら、その台詞は耳慣れてるんじゃねえか…?」
「ぐうぅぅ…うがあぁぁっ!!!!」
次の瞬間、頭は懐から短剣を取り出して少年に斬り掛かった。
「フンッ…」
だが所詮は苦し紛れ…少年に易々とかわされる。
次の瞬間、少年の刀が一閃、頭の手首から先が短剣ごとゴロリと地面に転がった。
「うぐおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!?」
頭は痛みにもがきながら地面をのた打ち回る。
「いちいち喧しいヤロウだな…そろそろ終わりにしてやらぁ!!」
少年は手にした刀を頭の胸に深々と突き立てた。
「ぎやあああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
頭の断末魔の絶叫が響いた。
刀を抜くと頭は口から大量の血反吐を吐き出しながら言った。
「ガハァッ…こ…小僧ぉ…さ…最期に…最期に名前をぉ…」
「名前?良いぜ!冥途の土産に教えてやらぁ!俺はリン!リン・ヤマトだ!!」
「ち…ちが…テメェの名前なんざ…知りたくもねぇ…最期に…俺様の名を言わせろ…俺様の名はぁ…………」
…と、そこで頭は事切れた。
リンと名乗った少年は呆れ顔でそれを見下ろして呟く。
「…ったく、最期の最期に自分の名前かよ…自分大好きチャンもここまで貫き通しゃあ逆に気持ち良いモンがあるな…」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す