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無能王子と愉快な仲間たち
官能リレー小説 - ファンタジー系

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無能王子と愉快な仲間たち 7


 ‡ ‡ ‡ ‡ ‡

翌朝…
「うぅ〜ん…」
目覚めたアーサーが認識したのは、裸でベッドに寝ていた自分と、その隣で同じく裸で眠っているルシア…という状況であった。
「……」
「あ…おはよう、お兄ちゃん♪」
「ルシア………………何が“お兄ちゃん”だ!このたわけ者ぉ!!」
「…え?…え!?」
とつぜん声を荒げるアーサーにルシアは訳が解らず頭の中が?でいっぱいになる。
「使用人の分際で僕と同じベッドで眠るとは良い度胸だなぁ!!」
「ちょ…ちょっと待ってよ、お兄ちゃん!私たち昨日あんなに愛し合ったじゃない!覚えてないの!?」
「うるさぁーい!!出ていけ…今すぐに出ていけえぇーい!!」
「ひ…ひどいよぉ!お兄ちゃぁん!うあぁ〜〜ん!!」
ルシアは泣きながら床に散乱していた服を拾い上げると裸のままアーサーの部屋を出て行った。

マチルダは行政書類に判を貰おうとアーサーの部屋に向かっていた。
彼女がアーサーの部屋の前まで来た時である…

バアァァンッ!!!!

「うあぁぁぁん!!お兄ちゃんの馬鹿あぁぁぁぁぁ!!」
…突如として扉が勢い良く開け放たれ、裸のルシアが飛び出して来たかと思うと、泣き叫びながら走り去っていった。
「…え?…ええぇぇぇぇぇぇっ!!!?」
その光景を目にしたマチルダは慌ててアーサーの部屋へと駆け込む。
「で…殿下ぁ!!ついに…ついに為すべき事を為されたのですねぇ!!?」
驚愕と期待と歓喜に瞳を輝かせてアーサーに向かって尋ねるマチルダ。
あぁ…我が主もやっと目を覚ましてくれた…積年の苦労が今まさに報われたのだ…と彼女は心から思った。
ところが…
「まったく…意味が解らん!やはり現実の女などクソであった!これでハッキリと判ったぞ!僕が愛情を注ぐべきは物語の中の女性達のみ!昨夜の事は一時の気の迷いだ…さぁ〜!執筆!執筆!」
女に目覚めたはずの主は裸のまま机に向かい、決意を新たに原稿に筆を走らせていた…。
「馬鹿な…」
マチルダは崩れ落ちた。
彼女の苦労は続く…。


2.不能王子

アーサーの童貞喪失という“珍事”から一週間…オラーフの城には何事も無く平穏な日々が流れていた。
そんなある日…
「殿下、王都の国王陛下から殿下宛ての書状が届いております」
「うむ…」
アーサーはマチルダから書状を受け取ると、読まずに裂いた。
「ちょっ…何て事するんですかぁっ!!?」
「フンッ!父上からの手紙など、どうせ大した事も書いていないに決まっている。読むだけ時間の無駄だ!」
「そう来ると思って失礼ながら内容を事前に確認させていただきました」
「何だと!?」
「…来月、殿下の弟君であらせられますシャルル殿下の16歳のお誕生日を祝う式典が王都の宮殿で催されます。つきましては…」
「お断りだ!!誰があんなヤツの誕生パーティーなど出席してやるものか!!」
「…ええ、ですから殿下は“出席しなくて良い”との事です。むしろ“来ないでくれ”と…」
「……」
アーサーはしばらく沈黙していたが、やがて口を開いた。
「あー、マチルダ、久し振りに礼服を新調しようと思うんだ。だって可愛い弟の誕生会だもの。目一杯おめかししなきゃね。父上と義母上も元気にしているかなあ。久し振りに会うのがとおっても楽しみだあ」
「行く気なんですか?行く気なんですね?」
「当然だ!!」
アーサーは叫んだ。
「来るなと言われたら行く!絶対行く!例え死んでも行ってやる!」
「嫌がらせですか。やめた方が良いですよ」
「か…勘違いしないでよね!?別に王都の連中が嫌がる顔を見て楽しむのが目的じゃなくて、弟の誕生日を祝ってやりたいだけなんだからね!」
「何でツンデレっぽく言うんですか…てゆうか空気読んでくださいよ」
「空気?…ハッ!上等!空気なんてぶっ壊してやる!完膚なきまでにな!僕はなぁ、王位を奪われた事とか、王都から追い出された事とか、そんなのハッキリ言ってどうでも良いんだ!ただ僕一人だけをのけ者にしてヤツラだけで楽しくやろうという、そういう姿勢が許せないんだ!!解るかマチルダ!?この気概が!!」
「仮にも王族なら前者の理由で怒りを感じてください!!」


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そして翌月…

ここはメインランド王国の王都アルティレニア、その中心に位置する王宮には、この日、国中から貴族達が集まっていた。
第二王子シャルルの誕生日を祝うため…というのは表向きの理由で、実際は政治活動のためだ。

建国から日の浅いメインランド王国では、未だに“建国時の功臣達”というのが健在である。
彼らは(既に何人か死去しているが)今12人いて、既に皆かなりの高齢なのだが、先王より“元老”なる特別な地位を与えられており、二代目である現国王をも凌ぐ大きな発言権を持ち、政治に干渉しまくっていた。
当然、国王としては面白くない。
何とか元老達を政治から排除したいと考えるが、いかんせん権威も権力も、それに人望も元老達に及ばず…。
一方、それを阻止せんとする元老達も一枚岩ではなく、互いに牽制し合い、時には足を引っ張り合っている状態…。
つまり国の中枢が非常に不安定なのである。
だから貴族達は常に誰が優勢か目を光らせ、どの派閥に属するかを見極めねばならない。
全ては家名と領地の存続のために…。

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