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異世界のリョナラー
官能リレー小説 - ファンタジー系

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異世界のリョナラー 28

まずは静電気に覆われたように体中の毛が逆上がるような感覚。そして鼻の奥を金属を切断するときのようなツンとした匂いが刺さり、太陽を虫眼鏡で覗き込んだようなまぶしさに覆われ耳は許容量を超えた轟音に貫かれた。
目と耳の感覚が一瞬麻痺したけどすぐに回復した。
辺りは野原は黒く焦げ、岩は溶けかけて煙を上げていた。
ノイエンタール兵もエーデルラント軍も消し炭になっていた。無事なのは僕一人だけのようだと辺りを見回して確認した途端また爆発に巻き込まれた。
目も耳も次第に爆発の中でも効くようになってきた。
爆発はどうやら僕を中心に起こっているようだ。
激しい衝撃で立ち上がろうにも自分の意志に逆らって暴れるトランポリンの上にいるように体制を立て直すこともままならず激しい振動と爆風にあおられる。
爆発で僕がどうこうなることはないけどこう何度も吹っ飛ばされるのはいい加減滅入ってくる。
僕は地面に貫通攻撃魔法を放って穴をあけるとそこに落ちるように転がり込んだ。
地上では爆発が続いて穴の中に砂利が降り注ぐ。
生き埋めになっても死なないだろうけどただ埋まるのは趣味じゃない。
爆発のもとと思われる魔力の発生源を感じとり、僕はそちらの方へと魔法で穴を掘り進んだ。
地面を上げるとそこには少数のエーデルラント兵が爆発の方を眺めていた。
その中で少年兵に囲まれてひときわ目立つ銀色の鎧を身にまとった長身の女戦士と老獪という言葉が当てはまるような老婆が馬から降りて話していた。
「本当にこれで奴を倒せるのか?」
「不死身の化物などこの世にはおらん。万象は必ず滅びる。おそらくあの化物は周りの命を取り込むことであの力を発揮しておる。ならば取り込む命を根こそぎ奪い力を削り続ければ消滅するのは必至!」
老婆は得意そうにそう言い張った。
僕は後ろから近付くと少年兵に尋ねた。
「誰?あのドヤ顔の婆さん」
「し!宮廷魔術師のアヴィ様だ!言葉に気を付けないとひどい目に合わされるぞ!」
少年兵は声を潜めて僕をたしなめた。
「聞こえておるわ小僧!グランディス将軍の子飼いだからと調子に乗りおって。こっちに来い!」
アヴィという老婆はカズキを呼び寄せた。
「貴様…。儂のことも知らんでグランディス将軍の側近をしておるのか?」
グランディス将軍は見覚えのない僕のことをマジマジとみる。アヴィの問いかけに答えないで僕はアヴィが持っている数珠のような飾りが気になってサッと取り上げた。
「何をするぅ!」
手を伸ばして取り返そうとするアヴィを片手で押さえて飾りを太陽にかざした。赤黒く濁った水晶の中に胎児のようなものが見えた。
「宮廷魔術師っていう割にはずいぶんグログロしい力を使ってるね?これって胎児?これが魔力のもとになってるんだ」
僕の言葉にそこにいた人たちは凍りついたように固まった。
グランディス将軍と呼ばれた長身の女戦士も視線を僕からアヴィに移していた。
「どういうことだアヴィ!胎児を呪術の糧にするのは禁呪中の禁呪だぞ!?」
グランディスは僕が持っている飾りを確認しようと手を伸ばすがアヴィはそれより早くそれをひったくった。
「何をおっしゃるグランディス将軍。こんな小童の言うことに振り回されるとは将軍とあろうお方が…」
「まずはその飾りを改めさせてもらおうか?」
グランディスは手を出して飾りを渡すように促す。
「今はまずあの化物を滅するのが先じゃ!」
そう言ってアヴィは爆発の続く焼野原に向き直ろうとするが、そこで硬直した。
そしてゆっくり僕の方に向く。グランディス達もそれに気づいて僕に視線を向けた。
「きききききさまぁ!なぜここにぃ!?」
取り乱すアヴィを見た僕の感想。「こんな婆さん、いたぶっても面白くないな」だ。
再度僕は飾りをひったくる。グランディスとその側近が殺気立ち剣の柄に手をかけた。
アヴィはアウアウと口を動かすだけだ。
飾りの珠からいくつもの念を感じる。胎児らしきものは一つだけではなかった。
それらが呪怨を発し、それをアヴィは力としていたようだ。
僕は念じてみた。その力をアヴィに剥けるとアヴィは突然蹲り苦しみだした。
グランディスは問答無用で剣を抜き切りつけてきた。側近もそれに習うが僕に傷をつけることはできなかった。
グランディスは僕を倒すこともできず地面をのたうつアヴィを助けることもできず距離をとるしかできなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ…はぁぁぁぁぁぁ」
ようやく苦しみが治まり、アヴィは立ち上がった。
その顔は老獪醜悪な老婆ではなく円らな瞳の金髪碧眼の幼女を過ぎた美少女だった。
これには僕もびっくり。某アニメ映画の空賊の女お頭の「アタシの若い頃にそっくりだよ」と言うのはあながち嘘じゃなかったのかもと思ってしまうほどの変化だった。
「アヴィ!その姿は?」
戸惑うグランディスの指摘にアヴィは自分の顔を触ってみる。シワだらけの顔は艶々になり、垂れた鼻は軽くツンと立ち上がっていた。
宮廷魔術士の服は少しブカブカになって動きづらそうだった。
僕はそのアヴィの前に立つと顔面に拳を叩き込んだ。
本気だと顔を貫通してしまうので手加減をしてだ。短い悲鳴を上げながら地面を滑る。
痛みとショックで声を上げられず、鼻と口からあふれる血を抑えるが指の間から血がぼたぼたとこぼれた。
「やっぱりいたぶるならこうじゃないとね」
そう言いながら僕はアヴィに近づいた。

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