PiPi's World 投稿小説

デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 97
 99
の最後へ

デッドエンド 99

レネーはてらいなく、笑いながら答えた。
文章自体は共通語で書かれているのだが、ところどころに、外国語だか古語だかの見たこともない文字や、共通文字で書かれていて音だけは何となくわかるが聞いたこともない単語が混じっている。
文章にしても、小難しい言い回しで意味がとりづらい部分が多い。
「タワドで、ご贔屓だった先生に読み書き演算は教えてもらったけど、こんなのまではね。でも、クリスも読めないの?」
「普通は読めないだろう、こんなの」
レネーの言いぐさに、私は顔をしかめた。
「そうなの?リオンは読めるよ。学校行ってりゃ読めるのかと思ってた」
私は思わずリオンの方を見た。
彼はつまらなそうに頬杖をついて窓の外を眺めていた。

「エーメダルのごとき…閉鎖…トルグ、ル、の範疇において、『……』の色彩と…セイプネカは、自己表現の…プロセスを…」
つっかえつっかえ、レネーが音読する。
声に出してみても意味不明なのは変わらない。レネーはリオンの前に本を突きだした。
「リオン、これ何て読むの」
「アーバルーザ。『現世の鳥』」
リオンはちらりと目をやると、無造作に答えた。
「『物質界のごとき静的閉鎖系の範疇において、『現世の鳥』の色彩と形状は自己表現を目的とする進化プロセス途上での停滞状態を示していると考えられる。』……なあ、お前、こんなもの読めても仕方ないぞ」
すらすらと一文を読み上げる様子に驚いていると、彼はレネーをたしなめるように、本をトントンと指で叩いた。
「何で?これも魔法書でしょ」
「魔法書は魔法書でも、『第三の書』はでたらめだ。架空の呪文体系を本物みたいに書いて、偽書きだっつって発禁になったんだ」
「まじで?でも高く売れるって言ってなかった?」
「希少価値のせいだ。筆者が有名人だから。魔法の勉強したいなら、あっち読むか魔法使いの弟子になれよ」
あっち、と言いながら彼が示したのは、レネーの持つもう一冊の本だった。
『伝承歌と呪文』。
「あれ全部読んで、自力で呪文式つくれるなら、師匠はいらないけどな」
「あっちはもう全部読んだよ。何回も。こっちは読みにくくて敬遠してたけど、もちょっと魔法力がマシになる方法、載ってないかと思ってさ」
「呪文は、発声と発音でちっとは違うが…でもお前の場合どっちにしたって、自分にも大して効かないんだから、あきらめた方が無難だ。ナイフ投げの練習しとけ」
「冷たいなあ。これでも最近、効きが良くなってきたと思ってんだけど」
ぼやくレネーに、リオンは言った。
「クリスにだけだろ?」
「え?」
「俺にはちっとも効かないじゃないか」
そういえば。
私は思い出した。
道中、軽いすり傷切り傷を負うことはよくあった。そんなときにレネーの使った魔法は、私には少し効いたが、確かにリオンには全くこれっぽっちも効果がなかった。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す